長谷川一夫を始めとした名優たちの熱演や、最も切れ味があるとも言えるくらい奇抜で見事な映像表現、劇中劇を上手く用いた構成等が素晴らしい市川崑の最高傑作の一つ。
この作品も59年版ビルマの竪琴や東京オリンピックと並んで世界的な知名度も高い(というか日本外での評価の方が高い?)市川作品となっているが、長谷川一夫の女形が偶にコウメ大夫に見えて笑えてしまうこと以外の問題点が思いつかないくらい出色の出来となっており、個人的にも59年版ビルマの竪琴以上の一番好きな市川崑作品かなと思える。
これまで300本もの映画に出ていた長谷部一夫が以降映画出演を引退することとなったけど、その決意ももしかしたらこの力作が記念作になったことも大きかったのかもしれない。
長谷川一夫といえば谷中霊園に墓があるってことで訪ねた際にファンのお婆様方と遭遇して珍しがられた出来事を思い出すが、今や遠い過去の記憶となってしまったので少し寂寥感も覚えるな。