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雪之丞変化のchicaのレビュー・感想・評価

雪之丞変化(1963年製作の映画)
4.0
長谷川一夫さん、活動写真時代から映画界の最後の女形(オヤマ)として日本映画史に大変な功績を残したと聞いていて、ずっと気になっていた。彼は「雪之丞変化」1935年衣笠貞之助監督版と、この1963年市川崑監督版で2度主演を務めている。
映画が「活動写真」だった頃のその社会的地位の低さから言って、歌舞伎出身の長谷川一夫が活動写真をやることは当時とてつもない挑戦だった。数々の苦難を経ての、この映画での彼の貫禄といったら。


女形として舞台や映画に出るときには「女性」を演じることになるのだろうが、この映画で彼はまさしく「女形」を演じる。
このことで長谷川一夫彼自身と雪之丞が重なる。また雪之丞は芝居以外でも女形としての自分を崩さない。しかし自他共に彼が女形だということを認め、女性は次々と彼の女性的な表面の内側にある「男前」な部分に惚れてしまう。女性とも男性ともつかない女形独特の魅力、それが倒錯的な感情を呼び起こすこともまたこの映画の面白さだった。


さらに面白いのは長谷川一夫が一人二役で闇太郎を演じているということ。出てきてすぐに「一人二役だ!」ということはわかるが、化粧のせいもあるが全くの別人だった。雪之丞と闇太郎が同時に登場するシーンもあるので、映画でしか一人二役は無理だろう。とても面白い試みだった。


あとは市川崑監督の影と光の使い方。とても黒が深い画面だったのでスクリーンで見られて良かった。劇中で何度も雪之丞の目元だけに光が差すシーンがある。これはとても重要なシーン。長谷川一夫の目元の美しさはまさに女性の美しさをこえる。最後中村鴈治郎に仇討ちを明かす時、雪之丞の影が死んだ母親の姿になるシーンは(何かのオマージュかもしれないが)最高の名シーンだった。
また市川崑監督のどの作品でも言えることだが幻想的な映像も魅力のひとつ。冒頭の踊りのシーンは特に美しかった。またジャズっぽい音楽も超カッコよかった。あえてミスマッチさを狙ってきたのだろうが、異文化のみごとな融合だった。


あとは大映大スター祭り。笑
脇を固めるのは山本富士子、若尾文子、中村鴈治郎、市川雷蔵や勝新まで(しかもチョイ役)オールスターだった。凄すぎる。


長谷川一夫は着物姿で殺陣までやる。これが最っっっ高にかっこいい。
ちょっと長いと感じたのと、闇太郎の解説じみたセリフが説明過剰だったので4.0。
でも見応えあるし、長谷川一夫の特異な存在感は絶対見て味わうべきだと思う
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