⭐︎孤独を抱えた大学生がふとしたきっかけから水墨画の権威から見そめられ、水墨画で人生を切り開くストーリー。
⭐︎オープニングのお弁当を取り替える出会いや、絵の前にに立ちすくむシーンから、心の温かさや人としての豊かさが溢れる雰囲気で引き込まれる。
⭐︎青く透明感ある映像のタッチは、黒を艶やかに魅せていて水墨が繊細に引き立ち綺麗。柔らかい光の入り方も芸術的。
⭐︎服装や寺院・道場の造り、絵道具にも統一感があり、無駄な色を使わず天然で上質なものでまとめられた画面はシックで美しい。何よりも一番質素な一人暮らし部屋が墨絵と和紙でゲシュタルトに溢れているのがアートだった。
⭐︎水墨画の道について、何も分からないところから始めた主人公が一つ一つ進んでいく様が、丁寧に描かれていて、難しい絵の題材でも分かりやすくなっている。技法など丁寧な説明で、つい描いてみたくなる演出。
⭐︎実際の絵画の世界はもっとドロドロしているだろうけれど、水墨画のように爽やかで純粋な師匠や弟子のキャラクター設定は、理想的なところを取り出していて心地が良い。
⭐︎ご飯が見た目も食べ方も、とても美味しそう。
⭐︎突如まさかの人物が絵の生パフォーマンスでピンチを救うシーンはドラマティックで良かった。
⭐︎着物の晴れ姿が、オシャレで真似したくなる。ポニーテールの粋な着こなし、帯と着物の柄のデザイン性も高く、モダンな組み合わせも素敵。
⭐︎主人公の影の部分に少しずつ近づいていく展開と、自然のしぶとさをリンクさせ、自然な流れで水墨画の道へと誘われる流れがきれい。
⭐︎物語の進むときに流れるクラシック音楽、弦楽器の高音のスッと通るクリーンな音色が涼しげでぴったりマッチしている。
⭐︎あなたの絵がすきという台詞が強調され、ヒロインとは最後まで疑似恋愛のかたちのみ見せていたことは水墨画を大切に扱っているようで好印象だった。