ぶみ

MEMORY メモリーのぶみのレビュー・感想・評価

MEMORY メモリー(2022年製作の映画)
3.5
信念、それは最強にして最後の武器。

ジェフ・ヒーラールツが上梓した『De Zaak Alzheimer』を、マーティン・キャンベル監督、リーアム・ニーソン主演により映像化したサスペンスで、2003年のベルギー製作『ザ・ヒットマン』のリメイク。
アルツハイマーを発症した殺し屋が引退を決意し、最後と決めた仕事を引き受けたものの、ターゲットが少女だったことから契約を破棄、裏組織による陰謀に迫る姿を描く。
原作は未読であり、リメイク版も未鑑賞。
主人公となる殺し屋アレックスをニーソン、FBIの捜査官をガイ・ピアース、実業家をモニカ・ベルッチが演じているほか、ミア・サンチェス、タジ・アトワル、ハロルド・トーレス、リー・ボードマン等が登場。
物語は、「子どもだけは守る」を唯一の信念とするアレックスが、依頼の裏に隠された巨大な陰謀に巻き込まれていくという、もはや手垢がつきまくった既視感満載の展開を見せるが、本作品の特徴は、凄腕の殺し屋であるアレックスがアルツハイマーを患っているということ。
そのため、覚えておかなければならない事項を腕に書いておいたり、薬を服用したり、時におかしな行動を取ったりと、他では見られないような殺し屋像を、これまたバリバリのアクションをするにはキツい年代に入ってきたニーソンが好演。
また、事件の捜査にあたる長髪のFBI捜査官が、ずっと誰かに似ているな、と思いながら観ていたところ、エンドロールを見て実はピアースだったのには驚き。
先日観た、『TAR/ター』でもマーク・ストロングに気づかなかったのと同様、ピアースと言えば、勝手に短髪でオールバックだというイメージを持っていたためであり、あたらめて先入観を持ってはいけないなと思った次第。
作品自体は、アメリカとメキシコの国境を舞台とした人身売買がテーマとなっており、コメディ要素も廃された、まさにサスペンスの王道を行くもの。
近年のニーソン出演作は、『トレイン・ミッション』や『スノー・ロワイヤル』『アイス・ロード』といったエンタメ度高めの作品がある一方で、『ファイナル・プラン』『マークスマン』『ブラックライト』といった地味目な作品も多いのだが、本作品は後者の路線である中でも完成度は高く、後者三作品と比較すると抜群の仕上がりを誇っている。
また、クルマ好きの視点からすると、冒頭アレックスがボロボロのホンダ・シビックで登場したのに始まり、レクサスISの初代モデルであるトヨタ・アルテッツァや、V36型の日産・スカイラインが登場していたのは、少し古めのモデルとは言え、嬉しい限り。
シリアス路線のニーソン作品の中では、十分満足いく内容であるとともに、アルツハイマーを患う殺し屋を見るのは、何とも切なくなる一作。

正義は保証されない。
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