べし酒

ロストケアのべし酒のネタバレレビュー・内容・結末

ロストケア(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

実在の事件をモデルにサイコパスとの対峙を描く映画かと思っていたら、社会的なテーマを問うサスペンス作品だったでござる。

熱演の役者陣は良きですよ。松ケンは流石の説得力だし、柄本明さんの演技も凄かった。対峙場面では窓や机に映る鏡像的な凝った画造りもあり飽きさせない工夫はあるけど、肝心の全体の構成が今ひとつな感。

原作は未読だけど、テーマ訴求したいならミステリー要素押し出してエンタメに振ってくれた方がいい気がする。

勿論絶対エンタメである必要はないけど、起きた事は時系列通り特に謎もなく一本道で進行し、犯人が何をどう考え行ったかも映像表現こそされるが全て素直に語るので、驚き的なカタルシスが全くない。
ラストに関わる冒頭映像の件は隠し要素のつもりなのかもしれないが、中盤の母親との会話で分かっちゃうしね。

テーマの重厚さがあって敢えてスッキリとさせるエンタメ性は封じたのかもしれないが、坂井真紀の被害者家族の思いは家族論で終わらせてしまうし、戸田菜穂の法廷での叫びは深掘りされない。
建前正義論かましてきた長澤まさみ検事の最終盤が単なる感傷告白で終了って、ええ?なにか明確に訴えたいことがあるんじゃないの?

まあ観た人が自分で考えて悩んで欲しいということなのか、この国の政治がおかしいという問題提起なのかもしれないが、ラストのやり取りはまるで松ケン犯人の行いの正当性を認めてるみたいに思えてしまえるのはどうなのかな?
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