emily

ロストケアのemilyのレビュー・感想・評価

ロストケア(2023年製作の映画)
3.8
介護士×検事 民家で老人と訪問介護センター所長の死体が発見される。犯人として浮かび上がるったのが、心優しい介護士の青年だった。

二人の対話中心に展開する本作。交互に映る二人の表情、鏡越しに、背中合わせに、会話の駆け引き、表情の変化、さまざまなカットで見せる二人の対話は非常に見応えがある。

喪失の介護だという青年。 「救った」というが命を奪ったことは事実であり、当然罪である。ただそれにより救われる人がいるのも確かだ。

多くの人々が抱える介護問題、国が救えず、苦しみに明け暮れて命落とす人もいる中で、
正義の境界線がぼやけてくる。

父親との日々。父の葛藤、国からは何もしてもらえず、追い込まれていく日々。その正義感は検事から否定されるが、果たして観客はどうだろうか。大きな問題を定義され、徐々に青年に感情移入していく。

青年の訴えは説得感があり、検事の感情も揺るがす。そして検事に「救ってください」という青年。これまで救ってきて心ももうズタズタなんだろう。当然彼の決断も簡単なものではなかった。直接手を下すのも罪だが、何もせずに見捨てるのもまた同じ罪。

父親から「ありがとう」の言葉を聞けた時、自分の行ったことは間違いではなかったんだと。心救われたであろう。当然罪ではあるが、その行為が救いにつながるのなら、あなたならどうするだろうか?

答えなんて簡単に導き出せるものではない。法律だけが全てではない。見て見ぬ振りするのも立派な罪だ。

わたしたちができるのは目を逸らさないこと。その問題を真摯に受け止めることから始めなくてはいけない。
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