長澤まさみ演じる大友は、地方都市の女性検事。
ある事件を大友が捜査していると、松山ケンイチ演じる介護士の斯波が、自分のケアセンターの利用者41人を殺害していたことが発覚するが、斯波は自供で「殺したのは42人だ」と言うのだった…、という話。
こう書くと、2016年に発生した神奈川県相模原市の知的障がい者福祉施設で19人刺殺された事件がモデルになっていると思いそうだが、原作の小説は2013年に出版されており、殺人事件が主題ではなく、介護と家族の関係に真面目に取り組んだ話だった。
大友の母親は認知症が始まっているが、高級老人ホームに入っているため、直接介護は何もしていない。
私の母も認知症になり、デイケアや、最後には介護施設に入所したが、この映画に出て来た様な壮絶な介護は経験していないので、守られている側に入るのかもしれない。
斯波に家族を殺された遺族の中には、斯波に感謝している者も居れば、逆に「人殺し!」と叫ぶ者も居る。
私は戸田菜穂は、きれいな奥様役を演じているところしか観たことがなかったが、本作では育児、仕事、介護に追われてクタクタにやつれた主婦を演じていて、その熱演ぶりに驚いた。
また柄本明も、今ちょうど『新宿野戦病院』のドラマで、時々車椅子に乗っている飲んだくれの医師を演じているが、本作の寝たきりで言葉も上手く話せない老人役を観ると、同じ年寄りの役でも、役によって色々な演技をしていることが分かり、多才な人なのだと改めて思った。
最後まで観てもすっきりする訳ではしないし、見る人によって感想が色々分れる作品だと思うが、最近は介護保険の点数もより高くなり、利用内容も厳しくなっていると聞く。
一人でも介護が楽になってくれればよいのだが…と思いながら観た。