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ブエノスアイレス 4Kレストア版のmofuinkoのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

寂しい男と寂しい男が地球の反対側で互いを埋め合い、それでも寂しさ故に相手を支配しようとして間違い、反発し、離れるお話。

偉い評論家のかたのこの映画の見方はあるのだろうが、、、

私にはあの恐ろしく轟く滝が、生きている人間全てが孤独のために流す夥しい涙が一粒一粒集まって落ちていくようなものに見えた。それはセクシュアリティだけではなく、幼い頃目がよく見えず音に異常に反応するチャンも含まれる。自分は「ふつう」ではない、ということを自覚せざるをえない人間がみんな持つ孤独だ。(ゆえに愛し合ってもフェイとウィンは埋め合わせられない孤独をそれぞれ抱えている)

一人で見る滝の飛沫は、まるでウィンの涙のようにフェイにふりかかる。

体を動かし、働いて金を稼ぎ、見たことのないものを見て、自分の孤独はそのまま孤独なのだ、と悟ることのできた2人はブエノスアイレスを去ることができる。でも自分の孤独を埋めてくれる誰かを探し待ち続けるウィンはどこにも行けない。

涙が集まって落ちる滝は、灯籠に映して憧れるキラキラした天国のイメージとしての滝だ。映画を見てもの思う私のように、ウェイはランプの滝しか見ない。
遠目にみれば、物語はみな美しい孤独の昇華のよう。
寂しさは人間の必然、と言われているようで、悲しいけれども、一方で、誰しも等しく孤独なのだ、ということがわかった2人は、セクシュアリティが違っても、一緒にいなくても親しみを互いに持ち続けることができる。
不思議な清々しさのあるエンディング。
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