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『ムカシが来た―横浜市長屋門公園古民家復元の記録―』に投稿された感想・評価

松川八洲雄の中でもとりわけ自由に撮影されたいい意味でのゆるさが感じられる。極め付けは、それまでの物語と一切関係なしに撮影時に捉えた蝶々を紹介するといういかにも昆虫好きの松川らしい詩的な遊び心。
もちろんそのような自由さを兼ね備えつつ、長屋門の母屋とそこに通う人々を捉えた画面のショットは強烈なイメージとして刻印されている。かつて長屋門があった場所に備えられたハリボテの建築も忘れがたい。
冒頭、現在の横浜の海を見渡した街並みから長屋門公園の家屋、また米軍の通信施設とその存在のために開発がなされなかった横浜の一部地域と広がる並木道をモンタージュするアクロバティックさにまず驚く。そこからの工程は、『飛鳥を造る』とあまり変わり映えなく見たけれど、途中挿入される別の伝統的家屋を捉えながらその素材独特の造形を敢えて生かして造られた建築方法の素晴らしさを説明したシークエンスが魅力的。それがあることで現在職人達が行なっている作業を立体的に見ることができたと思う。今回の松川特集で散見された「蝶」のはばたきや、ラストに日常として、長屋門で家族との時間を過ごす瞬間や子供達が駆け回る姿を捉えた撮影もあり映画の豊かさをも体感できる。平成以降の横浜の土地を写すとどうも平べったいと云うか物足りなさがあって、その工夫としても米軍基地の存在感があるくらいで良い作品を知らなかったのだが、『ムカシが来た』は港町の焼けた空気を拒むことなく含み入れながら松川作品の主題に真に取り組んでいて、横浜映画としても好意的に見た。