ひでG

ソウルの春のひでGのレビュー・感想・評価

ソウルの春(2023年製作の映画)
4.1
とても面白かった。期待値もかなり高めに臨んだ鑑賞でしたが、それを難なくクリアしていく韓国映画の底力をまたまた見せつけられました。

日本映画と韓国映画の最大の差は、俳優や演出でなく、企画にあると思う。
本作のように、現代劇を映画の企画に乗せ、それをエンタメに仕上げてしまう見事さと肝の座ったところが、日本のメジャー系にはないのが本当に残念で仕方ない。

広州事件をテーマにした」タクシー運転手」をはじめ、数々の現代史作品が作られ、世界的にも評価されてきた。

そんな韓国映画でも、今まで取り上げてこなかったテーマ、そう本作で描く1979年
12月12日に起きた軍部反乱だそうだ。

映画はパク・チョンヒ大統領暗殺のニュースから始まる。
大統領は緊急的にチェ・ギュハに受け継がれるが、軍部はまとまっておらず、保安司令官チョン・ドゥグアン(後のチョン・ドゥファン大統領)を中心とした「ハナ会」の将校たちが軍部反乱を起こす。

それを食い止める首都警備司令官イ・テシン。
高潔な軍事イ・テシンを演じるチョン・ウソンの立派さと対比して見せてくるので、政治的な背景などあまり理解していなかった僕でも観やすかった。

小心で利己的でヒステリックなチョン・ドゥグアンを演じるファン・ジョンミンの姑息さ、今のところ、今年度の悪役ナンバーワン候補!

最初は、この人はどっちグループの人かなって、ごちゃごちゃになってしまったけど、この映画はそんなことお構いなしにぐいぐい進んで行く!

裏切り、密約、裏工作、逆転の先の逆転!
やって来た軍団が帰っていったと思ったら、ありゃ、ありゃ、そんな💦

そして、「えっ!」という結末。
ユーザーさんのレビューにもあったけど、これは、「ソウルの春」ではなく、
「ソウルの冬」の始まりだ。悪魔たちに権力を持っていかれてしまったのだ。

本作を観た後、復習のため観たYouTubeの中で韓国政治を専攻している学者さんのお話だと、韓国人に「どの大統領が最も良かったか?」との質問に対して、ダントツ最下位なのがチョン・ドゥファンだということ。
この事件の後、大統領だった8年間に、金大中ら政敵を逮捕し、あの広州事件を起こす強権政権だったのだ。

韓国社会にとっては、触れたくなく、思い出したくない出来事かもしれない。
でも、それを名優たちの熱演でエンタメ映画として昇華させ、それを国内で大ヒットさせる。
鈴木亮平がある番組のインタビューで、
「韓国映画の背中が見えなくなってしまった。」と答えていたのが印象的だ。

せめて、今はこの政変エンタメを堪能して日本でもヒットさせたいと思う。
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