このレビューはネタバレを含みます
安定の韓国政治映画
前半は、朴正煕の死に揺れる軍部内の混乱や政治に焦点を当て、全斗煥の反乱の地道な根回し、清廉な主人公の栄達が対照的に描かれていた。
後半に入ると、途端に緊張感が増し、全斗煥の暴挙にソウルの軍中央が動揺し、手に汗握るソウル攻防戦が開始する。ソウル防衛の責任者となった主人公は奔走の果てに、軍首脳部の腐敗や全斗煥の巧みかつ豪胆な策略で、劣勢に追い込まれてゆく。ソウルへの侵入を遂に許した主人公は、尚も抵抗を見せるが、それも叶わず。反乱を鎮圧しようとした者達は、逆に反逆者として獄につながれる。
そして、ラストの満面の笑み、誇らしげな顔を浮かべるハナフェ(全斗煥が首領の軍閥)の面々の集合写真。一人一人がアップされ要職に就いたことが分かる。この時の何とも言えない無力さと義憤に駆られる感覚は忘れられない。そしてソウルの春は終わり、残虐で陰惨な冬の次代を迎える。
全斗煥とハナフェのメンバーの関係は、武士道に於ける同性愛のようなものを、強く感じた。全斗煥は常に愛嬌があり、慕われているが、いざとなれば狂気を持って相手を支配する。メンヘラチックなその姿は、嫌悪感を催す。しかし、時代の勝者という者は常にサイコな博徒であったというのを強く思い知らされた。
人は強者に支配されたいのだ。全斗煥の放った言葉は、民主主義の永遠の課題を再認識させる。