シミステツ

長ぐつをはいたネコと9つの命のシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

恐れ知らず、ビビらず勇敢な賞金首のネコ。
そんな彼のアイデンティティを担保していたのは、命が9つあること。そこからくる自信、死など笑い飛ばす心持ちが彼を形成していた。でももし命が残り1つだとしたら?(甲殻類アレルギーで死んでるの面白い)

自分の拠り所がなくなった時に、人はどう感じ、どう足掻くのかという面白いテーマ。

命が1つとなったところで賞金稼ぎのオオカミと出会い、蘇る走馬灯、身体から溢れる「恐怖心」「死の象徴」が描かれ、賞金首のレジェンドからお別れし「ピクルス」という名で平凡な家ネコとして暮らすところではトイレ、キャットフード、雑魚寝など「尊厳」が描かれる。生き方や環境が変わった際の「セラピー」の必要性も示唆される。願い星の地図を持つジャック・ホーナーはコンプレックスと傲慢さの象徴。願い星の地図は心の有り様を表す地図。キティは「罪悪感」、ジャックのバッタは「良心」など。人は過去を顧み、死を恐れ未来を生きる。メメント・モリ。

「Maybe, one life is enough?」

プスが恐怖心に苛まれた時にやさしく寄り添うわんこのシーンは素敵だった。

「怖いのは普通だよ」

格闘シーンをあえてコマ送りっぽくしてコミカルさ・カートゥーン感も担保しているのは秀逸。ウルウルの瞳も面白かったし最後に効いてきて流石の一言。

人生の悲哀、尊厳を失う中でも誇りを持ち、文字通り死を恐れず命を賭けて闘い生きる勇気、そして大切なことに気づくまでが描かれたオールシーズンベスト級のアニメーション映画。

「チーム・友情」