kazuki

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 4K リマスター版のkazukiのレビュー・感想・評価

4.1
今回初見でした!
率直な感想は「色んな事が考えられる映画だなぁ,,,,,!!!(感嘆)」という事でした。

例えば, 良く言われる公民権運動のタイミングに黒人を主人公に起用した事で産まれた意味(ロメロは意図していた訳ではなかったが), これはバーバラがゾンビだけではなく黒人であるベンに恐怖しているようにも見える事を考えればより興味深くなります。

終末状況における人間ドラマという意味でも面白く,各登場人物の行動には,イライラする事もありつつ「,,けど分かる」という側面が必ずあります。現代の目線で見ると,女性の描き方としてどうなの?と感じてしまう人も多いであろうバーバラにしてもそうです。父の墓参りで感傷的になっていた所,弟が襲われて死亡(直前に彼が冗談でバーバラを怖がらせていた事も大きい),変な人達(当然バーバラ達はゾンビなどというものを知らない)が急に襲い掛かってくる。逃げた家には(当時の偏見でいえば特に女性にとって恐怖の対象であった)黒人がやってきて仕切り始める。しかも彼は生存に夢中で,慰めたり,話もろくに聞いてはくれない!(それが正しい行動であったとしても!)と,,,,考えていけば「…,分かる」となる所が面白いと思います。これはバーバラだけでなく,実はダメな所もあるベンや,誰もが一番うざいと感じるであろうクーパーさん,衝撃のラストにおける自警団についてもそうです。そういう意味でリアリズムの映画だと言えるかもしれません。

また、映画史に照らしても面白いです。
まず、本作は良く「ブードゥーゾンビからモダンゾンビへ」という文脈で語られていますが、単純に所謂我々が良く知るゾンビの特徴(のろい,食われるとゾンビになる,頭を破壊すればOK,それか燃やす,)が全て出て来て、大ヒットしたので定着するきっかけとなった。(2作目ゾンビまでは余り定着しませんでしたが), というだけでなく、ブードゥーから“モダン“へ、というのは、30年代のクラシックホラーや50年代の怪物映画が、ある種ロマン主義的/象徴主義的に大衆の内在的な恐怖を拾っていた所、本作ではリアリズム(写実主義/自然主義)的に表現し、それが大ヒットしたという意味でも”モダン”かもなぁ とも考える事が出来ます。

しかし,この68年の映画をきっかけに70年代に増えたホラー映画は、時代の流行もあってかオカルト色が強く、ゾンビ映画もブードゥーリバイバル的な側面が強い、、、所謂モダンゾンビ映画が大量生産されたのは、大量消費社会の批評的側面が時代的にもマッチした2作目以降です。(特撮技術の発展とのマッチや、白黒映画からカラーになった事でビジュアル的な要素が増した事も理由にあるでしょう) なので2作目の方が,時代の転換点として語られる事が多いのだと思います。

また、上手く言えないのですが、1作目は”唯一無二の何か”という意味でアート性が高いと言いますか、ジャンルや文脈に属さない“飛び地”に位置するような作品でもあると感じました。(私に中では『悪魔のいけにえ』と近い感じです。)歴史的文脈やコンテクストに寄らない普遍的な面白さが洗練された形で表れているというか、、なので、古びないし、逆にどの文脈にも入れる事が出来てしまうと言いますか。。
例えば、低予算モキュメンタリ―ホラーの文脈にも入れられるし、クローネンバーグのような医学的/科学的視点っぽい冷たいホラー、主に2014年以降のホラージャンルの潮流を指す言葉として最近言われる(私は嫌いな表現ですが)エレベイテッドホラーやポストホラーといった文脈など、なんとでも考えられてしまうぐらい、面白みが詰まっているなぁと思います。

長くなりましたが、私が劇中一番ニッコリしたのは、おいしそうに虫や肉を食べるゾンビの可愛らしさです。こういう生態を感じられるようなシーンはなんでかホッコリしてしまいますね。
kazuki

kazuki