Kuuta

ナイト・オブ・ザ・リビングデッド 4K リマスター版のKuutaのレビュー・感想・評価

3.9
星条旗が揺れる墓場。白と黒が転倒した世界。白人が窓に手を突っ込んで黒人を襲う構図は、「國民の創生」終盤のひっくり返しだが、庭先では一方、黒人が白人を殺す、ステレオタイプな構図も演じられる。最後の空撮、自警団がゾンビのように見える。バーバラが怖がっていたのはゾンビではなく黒人のベン?

・家の外にある「社会」が、間接的に家=アメリカ国内の疑心暗鬼を呼び起こす。家の中の主人公は、主観的な恐怖(得体の知れない敵と、人間への不信)に囚われる。彼らは人肉食などのゾンビの習性を、テレビを通して知っているに過ぎず、そうした「世界」の認識は歪められている可能性すらある。

ラストシーン、交わらないはずの両者が接触した瞬間、内側の繊細なドラマは、分かりやすい物語に書き換えられる。画面はゴシックホラー的な陰影も、大胆な動きも失い、報道写真の切り貼りによる語りへ移行する。ロメロは否定するのだろうが、ベトナム戦争を意識するなって方が難しい。

・冒頭の無言の逃走劇、ほぼサイレント映画。全力疾走で何もない田舎道を走るだけのショットが泣ける。ここが一番好き。

・起承転結の承に当たる、ベンが家を要塞化するくだり。絵面としては死ぬほど地味なはずなのに、編集のテンポとカメラワークの外連味、美しい撮影のおかげで、退屈しない。楽しいDIY動画。

・バーバラが白いテーブルクロス?に興味を持ったのは何故だろう。よく分からなかった。

・善悪で色分けできないキャラ描写。ベンはテキパキ行動するが、人の話は聞かないしすぐ殴る(バーバラをグーで殴る場面、あれはびっくり)。クーパーは嫌なおっさんのようでいて、家族思いで優柔不断なだけでもある。撃たれた後、娘のところに転げ落ちるように近づいていくとこも切ない。2人の間を取り持つトムは良い人だけどちょっと間抜けで、会話の雰囲気に流されがち。給油下手すぎで笑った。
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