ビンさん

リバー、流れないでよのビンさんのレビュー・感想・評価

リバー、流れないでよ(2023年製作の映画)
3.8
TOHOシネマズ梅田にて鑑賞。

先月、今月と下北沢トリウッドへ行く機会があり、ロビーに本作のポスターが貼られていて、あれ? 貴船神社? ってなもので。
下北沢で貴船神社とは、異なるものだなぁと思っていたら、予告編観て納得。
ヨーロッパ企画の製作による、映画第2弾であり、製作をトリウッドと共に行ったからなのであった。

そもそもヨーロッパ企画については、さほど熟知しているわけではなく、かつて上野樹里さんも出演された『サマータイムマシンブルース』(05)が、もともとは同劇団の舞台作品だったとか、その最新版の舞台では昨年『辻占恋慕』で、胸鷲づかみにされた早織さんも出演されてたな、とか、映画第1弾の2年前に公開された『ドロステのはてで僕ら』も面白かったなぁ、くらいの知識なもんで。

演劇絡みの映画となれば、ちょいとアウェイ感もあるかも、とちょっぴり懸念も持ちつつ観に行ったらば、アウェイ感なんて微塵も感じさせない、面白い作品に仕上がっていた。

京都は貴船神社の参道にある旅館を舞台に、なぜか突然、決まった時間からきっちり2分間、時間が戻ってしまうという怪現象が起こる。
そこに巻き込まれた人々の群像劇を、じつにユーモラスに描いていく。

『サマータイム〜』、『ドロステの〜』もそうだったが、今回もベースはSF。
このタイムリープについては、しっかり辻褄の合う(笑)設定が用意されている。
そこは当然、おざなりにせぬよう描いていただくのはもちろんのこと。

本作においては、物語を動かしていくきっかけであって、テーマとしては人間誰しも持っているであろうささやかな願望に重きが置かれている。
それは、あの時、ああしておけば良かった、という後悔と、そこから生じる時間が戻せたら、という願望だ。
さて、その願望は本作ではタイムリープとしてどのように活かせているか、が大きな魅力となってくる。

だから、科学的なあれこれは観ている間は一旦横へ置いておいて、とにかくこのいつまで続くやもしれぬタイムリープの波にどっぷり浸りながら、多彩な演者さんたちの見事なアンサンブルを堪能していただきたい。

物語の中心的な人物として、旅館の仲居ミコトを演じた藤谷理子さんのキュートさもさることながら、同じく中居のチノを演じた早織さんは、『辻占恋慕』の時とはまた違った雰囲気で好演されてたのが嬉しかったなぁ。

民俗学好きな僕としては、貴船神社といえばやっぱり「丑の刻参り」を連想してしまい、本作でも何らかの形で触れられるか、と思いきや、微塵も触れていないその潔さよ。
故にライトでポジティヴなエンターテイメントの秀作が生まれたことを、素直に喜びたい。
ビンさん

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