◆あらすじ◆
リジーは美術学校で講師を務める傍ら自分の個展の準備で大忙しであった。リジーは仕事を休んで自宅で作品の制作に取り組んでいた合間、飼い猫に傷つけられた鳩を発見する。時間が欲しいリジーが鳩を家の外に出してしまうが、大家で同じ美術学校の講師のジョーが鳩を発見してリジーに鳩を託して去ってしまう。リジーは鳩の治療に時間をとられ、自宅のシャワーが壊れているのをジョーが対処しないこともあって、ストレスを溜めていく。
◆感想◆
芸術家の主人公が時間や人間関係に翻弄されて精神的に追い詰められていく様子を描いた作品となっており、主人公の周囲に人々の自己中心的な振る舞いに主人公1人神経を尖らせていき、最終的にどうなるのか興味をそそられる内容になっていました。
主人公のリジー(ミシェル・ウィリアムズ)は生真面目で律儀、自分の関わることについて責任感が強い性格をしており、本作で一番まともな人物なんですが、彼女の住む家の大家のジョーやリジーの家族はリジーに構うことなく自己中心的に動くので、リジー一人苛立ちや不安を抱えることになっていて、なんとも気の毒な役回りだと思いました。
一方、リジーの大家にして芸術家のジョー(ホン・チャウ)は自由奔放で良い意味で自己中心的な性格をしており、リジーからすると疎ましさと憧れの存在であるように思いました。現実の世界でもジョーのような性格をしていた方が得だと思います。
前述のとおり、リジーの飼い猫が鳩を傷つけたことで彼女の生活が大きく揺れ動くことになるのですが、一度面倒を見た以上、ほっとけないリジーの性格がよく表れていて面白かったです。鳩の存在はある意味、リジーの心情を表していたようにも感じました。
また、リジーは自分の家族のことでも心配事を抱えており、父も兄も自分の思うように生きていてリジーだけが家族のために動き回っているように見えました。ストーリー後半、リジーの個展が始まって、リジーの家族が集結するのですが、芸術家家族の難しさを感じるシーンでした。
ラストは思わぬことでリジーの心も晴れたのではないかと思いました。いや、そうであって欲しい。
芸術家の生活を垣間見るとともに芸術家の中でもその性格は多種多様で少なからず損な役回りをする人物がいるものの、その人物にもいつしか報われるときが来るのかなと思う作品でした。なかなか面白かったです。
鑑賞日:2025年1月28日
鑑賞方法:U-NEXT