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別れる決心のdemioのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.0
被疑者×刑事の男女が、犯罪の真偽を問おうとする磁場の中で、逆に五感をはじめあらゆる交感の歓びを(まるで感覚種別のカタログのように多彩に)引き起こしてしまうという映画だけど、ふつう人間が当たり前に等閑視する感覚の原初的驚きを映像に書き留めようとするとき、あえてその苦みのある本懐を飲み込みやすくするためにミステリーやサスペンスを一種の服薬ゼリーのように用いるというのは、サルトル『嘔吐』に端緒を発すヌーボーロマンの手管に見えた。
パク・チャヌクにしては、過去の仕事の中でもとりわけストレートに、映画の道に進む前の来歴である「哲学の徒」の顔が出ている。(そのあたりの「Bムービーを愛する哲学者は、いかにBムービーを撮るべきか」という自問自答のような批評・来歴がつづられた『パク・チャヌクのモンタージュ』の内容を思い起こす。いまも時折読み返す非常によい本(絶版品切れだけど))

おもしろいのは、ミステリーとしては、クソつまらないというところ。
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