ボブおじさん

別れる決心のボブおじさんのレビュー・感想・評価

別れる決心(2022年製作の映画)
4.0
伏線が張り巡らされたヒリヒリとするサスペンスと、刑事と被疑者による禁断のラブストーリーが複雑に交差する綿密に計算された脚本。

直接的な性描写は無くとも、指先や目線からそこはかとなく漂うエロティシズムによって、知らず知らず映画の世界に飲み込まれていき、気がつけば驚愕のラストへと導かれていた。

男は根っからの刑事だった。優しい妻もいた彼は仕事や家庭よりも事件を愛していた。部屋の壁一面に貼られた未解決事件の写真は、彼が事件そのものに取り憑かれていることを表している。

そんな彼の前に運命の女が現れる。夫殺害の被疑者であった彼女は、謎めいた魅力を持つ危険な香りのする女だった。彼女は彼を愛し、遂には彼の頭の中にある未解決事件にまで嫉妬するようになる。

出会ってはいけない2人が出会って、男の中で何かが壊れた。女は究極の方法で男の脳の中に住み着いた。

スマホの翻訳機能を使用しての男女のやり取りや完璧ではない翻訳故の微妙な違和感などは中国語→韓国語訳→日本語字幕となる為、ストレートに伝わらないところもあり、外国語映画故の難しさも感じられた。

ミステリーとしては、ややご都合主義的なところも見られたが、映画の主題ははそこではないため、気にならない。

それでもラストは〝そうきたか!〟と思わず唸ってしまう見事さであった。できればもう一度見て、今回見落としてしまった伏線や言葉のニュアンスなどを再度確認してみたい。

〈あらすじ〉
不眠症の刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、ある男性が岩山から転落死した事件の捜査を担当していた。容疑者として浮上したのは、中国出身である男性の妻ソレ(タン・ウェイ)。夫の事故死にもかかわらず、ソレは悲しむこともなく、淡々と日常生活を送っていた。しかし、ソレには確かなアリバイがあったのだ。ヘジュンは捜査のためにソレを追い、時には取調室で対面する。本当に、この女性が夫を殺したのか? やがて二人は少しずつ惹かれ合っていく……。