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逆転のトライアングルのYKのネタバレレビュー・内容・結末

逆転のトライアングル(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

「Triangle of Sadness」というタイトルがなんとなくおしゃれで気に入っていたが、邦題はストーリーに合わせ「逆転の」となってしまった(別にいいけど)。ただ予告編にしてもフライヤーにしても、物語の展開を明かしすぎてる感はあり、「逆転待ち」の鑑賞になってしまうのが少し残念だった。逆転ありきとはいえ、逆転するまでの流れも十分おもしろかったし、単純な風刺ものだろうと高をくくっていた自分にとっては予想外のお気に入り作品になった。

登場するのは、モデル、インフルエンサー、武器商人、新興財閥など、世界各国の超絶セレブたち。豪華クルーズ船に乗って、昼はプール、夜は美酒という絵に描いたような贅沢暮らしを送っている。映画は、そんな彼らをちょっと小ばかにしたカメラでとらえる。話がかみ合わない老人たち、日光浴中に飛び回るハエ・・・。船という舞台がうまく使われており、迫りくる危機に備えじわじわと笑いを誘う脚本がおもしろい。天候が悪くなれば船が揺れるね、船が揺れれば歩きづらいね、酒飲んで酔うね、吐くね、という観客の予想がつぎつぎと当たっていくのが快感。船の揺れに合わせてカメラがゆらゆらしだすのも、ゼリーみたいな料理をプルプルさせるのも本当に意地が悪い(いい意味で)。

もちろん笑いだけがこの映画の特徴ではなく、性差、ルッキズム、経済格差といった社会的要素もはらんでいる。それは、単にどちらが正しいとかいう問題ではなく、立場や環境によって答えは簡単に変わって(逆転して)しまうということである。いまある社会システムの脆弱性に目を向けたことはあるか。「正しさ」「意識の高さ」というものを真面目にとらえすぎるくらいなら、ちょっと小ばかにしていたほうが健全だ。そういうものを感じている。
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