真一

ヨーロッパ新世紀の真一のレビュー・感想・評価

ヨーロッパ新世紀(2022年製作の映画)
4.4
レイシズムに蝕まれる
ルーマニア🇷🇴。
レイシズムに蝕まれる
ヨーロッパ🇪🇺。
レイシズムに蝕まれる
日本🇯🇵と世界🌎️。

私たち人類👥は
どうして他民族への
差別意識と憎悪感情を
克服できないのだろうか。
なぜ「社会問題の根本原因は
他民族や他宗教にある」という
思考回路に陥るのだろうか。
そんな暗澹たる気持ちに
させられるのが、
ルーマニア🇷🇴発の社会派作品
「ヨーロッパ新世紀🇪🇺」だ。

欧州🇪🇺に関する
基本的知識を欠き、
漠然と「ヨーロッパは
先進的でうらやましい」
と思っていた自分としては、
頭をがつんと殴られた
感じがする。
本作品🎥はレイシズム批判に
とどまらず、レイシズム💀を
培養する「格差社会」💸の
実態も浮き彫りにしている。
ルーマニア山間地の寒村を
巡る人間模様という
「小世界」🏡を題材にしつつ、
現代世界が直面する
グローバル問題🌐に
鋭く迫った意欲作です。

舞台は、トランシルバニア
山脈⛰️の麓にある小さな村。
晴れてパン工場🍞の
経営者となった独身女性の
シーラ🧏‍♀️は、地元向けに
求人募集を出しても
応募がないため、
人材派遣会社を通じて
スリランカ人🇱🇰労働者
数人を雇った。彼らは
良き働き手だったが、
地元からは「アジア人が
こねたパン🍞なんて、
不潔で食べられない」との
声が相次ぐ。
わき上がるレイシズム💀。
シーラ🧏‍♀️は苦境に立たされる。

そのシーラとの情事に
ふけるのは、ドイツ🇩🇪での
出稼ぎ労働から帰ってきた
地元男性のマティアス🧔だ。
マティアスは、ドイツ🇩🇪に
アイデンティティーと
誇りを感じる
ドイツ系ルーマニア人。
このため、出稼ぎ先として
ドイツ🇩🇪を選んだが、
勤め先の食肉🥩工場では
ドイツ人とみなされず、
差別される日々を送る。
そして、自分に対して
「ジプシー」と
ヘイトスピーチ💣️を浴びせた
上司👤に暴行を加え、
クビになってしまう。

帰省したマティアス🧔には
妻と息子がいるが、
2人からは見下されている。
それだけでなく、
ルーマニア系住民との交流も
ほとんどない。
相手にしてくれるのは、
ハンガリー系住民で
セフレのシーラ🧏‍♀️だけ。
マティアス🧔はシーラ🧏‍♀️への
依存を強める。

ところがある日、
差別にさらされる
スリランカ人👥を、
シーラ🧏‍♀️が自宅🏘️に
かくまっているのを発見。
歪んだ嫉妬に身を焦がす
マティアス🧔は、
外国人労働者👤👤👤
へのいら立ちを強める
ハンガリー系住民と結託し、
暴走への道🔥を歩み始める。
それはレイシズム💀の
被害者が、
自らレイシズム💀に
足を踏み入れた
瞬間だった―。

最大の見せ場は、
スリランカ人👥を
追い出すべきか否かについて、
住民が賛成派⭕と反対派❌に
分かれて激論を交わす
村民会議のシーンだ。

追い出し賛成の
レイシスト住民と
反レイシスト住民の比率は、
ざっと9対1。

「彼らを差別する気はない。
ただ、この地を出て行って
ほしいだけだ」

「アジア人がこねたパンを
食べて病気になったら、どう
責任を取るのか。これは
差別でない。科学の問題だ」

などといった、おきまりの
ヘイトスピーチ💣️が飛び交う。
この場面は17分間に及ぶ
長回しだったと、後から
パンフを読んで知った。
ものすごい緊張感と
リアリティーに
あふれており、観ている
最中は気付かなかった。

ルーマニア系住民、
ハンガリー系住民と
ドイツ系住民が、
歴史や言語、宗教の壁を
乗り越えて共生する
ルーマニア🇷🇴の
トランシルバニア地方⛰️。
だが、多様性に
満ちているように見える
当地にも、反グローバリズム
感情🚫を背景とした
レイシズム💀がまん延する。
翻って、私たちが住む日本🇯🇵は
どうだろうか。SNS上では、
埼玉県川口市に住むクルド系
トルコ人をことさらに敵視し、
追い出しを求めるような
ヘイトスピーチ💣️が目立つ。
在日中国人や
在日コリアンに向けた
差別攻撃🔥も、後を絶たない。

「トランシルバニア⛰️で
起きている問題は、決して
人ごとではない」と、
本作品を観て痛感した。

本作品🎥は、他民族国家
ルーマニア🇷🇴の実情を
リアルに表現するため、
ルーマニア語の台詞に
対応する日本語字幕は
白色◯、ハンガリー語への
日本語字幕は黄色🟡、
英語やドイツ語などへの
日本語字幕はピンク色🍑で
表示している。
理解が追い付かない
部分もあるが、
空気感は伝わってくる。

原題の「R・M・N」は、
ガンの疑いがある内臓を
磁力🧲でスキャンする
「MRI検査」🔬の
意味だそうです。

「ヨーロッパ🇪🇺の病を
スキャンしてみた」

そんなメッセージが
込められている気がします。
良作🎬️だと思います。
真一

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