ナガエ

アルマゲドン・タイム ある日々の肖像のナガエのレビュー・感想・評価

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良い映画だと思う。少し前(レーガン大統領が当選するとかしないとかっていうニュース映像が流れる時代)のアメリカを舞台に、マイノリティに対する差別感情が今以上に厳しかっただろう時代を描いている。あとで知ったが、この物語は、監督の実体験を基にしているそうだ。

印象的だったのは、おじいちゃん役のアンソニー・ホプキンスだ。出番こそ決して多くないが、正直、彼の存在感がメチャクチャ強く、なんなら主人公ぐらいの強さがある。なんというのか、人生のどこかのタイミングでこういう存在に出会いたかったなぁ、という気持ちになった。もちろん、「年の功」故の存在感ではあるのだけど、それでも、自分もこういう存在になれたらいいなぁ、と思ったりもする。

彼は、「高潔な人になれ」と孫に告げる。正直なところ、この言葉が物語全体を貫くことはないように思う。だからこそ、そこにリアリティを感じるとも言えるだろう。現実的には、父が語る「人生は不公平だ」の方が響く人も多いかもしれない。不公平だから、なんとか生き延びなければならない。

ポールは、伝統校に通う兄とは違い、地域の公立校に通っており、そこには黒人の子供も通っている。ポールは、ジョニーというクラスの問題児である黒人の少年と仲良くなり、ポール自身はジョニーと楽しい日々を過ごしていた。しかし、ジョニー自身の態度にも確かに問題はあるものの、恐らく「黒人である」という事実も相まって、教師から良い扱いを受けられず、また、話の断片から、家庭環境の厳しさも伺える。それ故にジョニーは、反発するような態度を取ってしまい、そしてポールもそれに同調してしまうのである。

そうやって、ジョニーだけではなく、ポールの状況も悪化していくことになる。

ポールは、ジョニーと比べれば圧倒的に恵まれた家庭環境に育っているが、しかしそれでも、両親のスタンスに馴染めないものを感じている。親族の中で唯一、おじいちゃんだけが心を許せる相手で、おじいちゃんの言うことだけは素直に聞くという具合だ。

そんな彼らの、葛藤の日々が描かれる。

やはり思い返してみても、アンソニー・ホプキンスが一番印象的だった。あと、やはり教育というのは大事だなと思う。
ナガエ

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