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CLOSE/クロースの犬のネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

今年劇場で見た映画で1番余韻から抜け出せなかった映画。後半はずっと泣いてた。誰の気持ちに寄り添っても辛かった。

思春期の言葉にできない繊細な感情の機微、それがもう本当に痛いほどに伝わってくる。
直接的な表現はないけど、「もういない」ということをいろんなシーンから感じてしまう。だから些細なシーンでも見てるのが辛かった。

レオもレミも自分らしくいて欲しかった。誰になんと言われようと、他人からの評価など気にせずお互いの関係性を維持して欲しかった。多感な思春期を過ごす二人。他人の視線にいちばん敏感な時期だと思う。同級生からの些細な一言で簡単に関係性は壊れてしまう。向けられる悪意は容赦なくて、徐々に壊れていく二人の関係性が切なく悲しい。幼い頃からの関係性は普遍的なものだと思っていたのに、他人からの冷やかしでレオが距離を置き始めることも、レミが不安定になる様も、待ち受ける未来も、全てが悲しい。辛くて見ていられなかった。

まだ中学生と子供のレオは現実にうまく向き合えない。アイスホッケーにがむしゃらに取り組んだり、黙々と家業の手伝いをしたり、そういった些細な日常描写から喪失感や、現実を誤魔化そうとしている様が伝わってきて痛々しかった。混乱や悲しみがひしひしと伝わってきて、胸がいっぱいになってしまう。中学生のレオ一人に抱えさせるのは酷だった。
「会いたい」の一言がとても心に残る。切なくはあるけど安心した。演技のはずなのに、自然と出た言葉に聞こえた。


レミもレオもレミの母親も、セリフがなくとも表情で演技してた。横顔や、見つめる視線に泣いた。何も言わなくても登場人物の悲しみが痛いほどに伝わってくる。うまく言語化できないけど今後も自分の中に残り続ける映画だと思う。悲しい、辛いしか言ってないし、実際にそうなんだけど、でもまた見たい。
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