き

CLOSE/クロースのきのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

めちゃくちゃ良かった。久しぶりに自分の好みドンピシャだった。見にいくか迷ってたけど観に行って本当によかった。
本当にしんどくて、色々考えさせられる。表情のシーンがどんな感情にもとれる撮り方で多くを語らない感じよかった。


①最初の方は本当に仲良く遊んでいるレオくんとレミくんが描かれている。レオくんのお家がお花の卸業者?のようで、一面花畑の綺麗な風景の中2人が楽しそうに走り回っているのは観てて幸せになった。
周りの視線とか2人の関係をどういう風に見られているのか…とかは学校に行き始めてからレオくんが気にし始めるので、人間社会に生きる者として学校やいろんな価値観の人間が集う場所に通わなければならないのは仕方のないことだけど、もし学校なんて行かずにずっと2人で楽しく過ごしていたら、、なにも変わらずずっと幸せだったのに…って思ってしまう。
部屋でレミくんがオーボエ吹いてる時の隣にいるレオくんの視線が、楽譜やオーボエそのものじゃなくてずっっっっとレミくんの顔を見ているのが分かるカメラアングルで、「この子は本当にレミくんのことが大好きなんだな」と思った。


②ベッドにいる時の小声で話す感じがとても好きだった。レオくんがおとぎ話みたいな不思議な話をして眠れないレミくんを寝かしつけてくれるシーンとか、ほんとに言葉にならないなんかもう神秘的な感じがした。お互い親友以上の、家族に感じるものともまた違う、本当に特別な関係性なんだなって思った。「きみとおなじ特別だ」って小声で囁くレオくんの御伽話良かった。まじで永遠に続いてこの幸せ…となった。

②学校に通い始めてからの2人の絶妙な気まずさとか距離感とかの描写の仕方がうますぎて本当にしんどかった。いつも隣にいてくっついているレオくんとレミくんを観て、男の子たちはレオくんを「オトコオンナ」ってからかってきたり、恋バナが好きな女の子たちは「2人は付き合ってるの?」って聞いて来たりとか、自分たち2人の関係性が周りの友達同士が築いている関係性とは違うんだって気づき始めて戸惑って、距離感がわからなくなり始めるのしんどかった。
レオくんは多分女友達たちに言ったままで、「キスもしないし手も繋がない、親友以上に大事な家族・兄弟」だったのかもだけど、レミくんはどうだったんだろう。一緒の気持ちだったかもしれないし、もしかしたらレオくんに対して恋愛感情もあったのかもしれない。でも一切レミくん視点の描写とかレミくんの気持ちがわからない感じ良かった。というかレオくんも実際どういう気持ちだったのかわからないと思う。口では「兄弟、家族みたいな感じ」って言ってるけど、こっちが観てる限りでは家族でもあるけど唯一無二な感じがした。レオくん自身でも自分の気持ち分かって無さそう。


③レオくんに一緒に寝ることを拒否されて朝取っ組み合いの喧嘩になった後、朝ごはんを食べられなくなるほど食欲がなくなって静かに涙を流すレミくんと一緒に私も泣いた。ずっと隣にいてこの距離感の近さでそれが当たり前で、この先もずっと変わらないって思ってただろうに…レミくんの気持ちを考えたら本当に泣けた。

③いじめられたくない、普通になりたいっていうレオくんの葛藤もしんどかった。レミくんよりもより身体の線が細くて、肌の色も白いからきっと他の男の子達に揶揄われたりいじめの標的になりかけたりしたんだろうなと思った。
もしかしたらレミくんも揶揄われていたのかもしれないけど、そんなことよりレオくんと一緒にいたい気持ちがレミくんは強かったのかもなと思った、レオくんと学校で一緒に居なくなってからも何人かの少ない人数で友達たちと静かに穏やかに話している描写もあったので、一軍?っぽい男の子達からの揶揄いとかどうでも良かったのかも。レオくんの方が「僕たちの関係は周りから見たら異質なんだ。揶揄われたく無い、いじめられたく無い、普通になりたい」って気持ちが強かったんだろうな…。
実際アイスホッケーの更衣室?や学校での休み時間とかに、みんなで円になって1人の子を服を振り回して叩いたり、腕立て伏せをさせているのを笑って盛り上げたりしていて、そこにレオくんも加わっているのが、「みんなやってるから僕も加わっとかないと普通だと思われない」っていう同調圧力を感じている感じがした。そこまでいじめてる自覚ないのに完全にいじめてる感じしんどい。


④学校の友達たちとの興味のない会話に相槌を打ちながら笑ってるレオくんを見るたびに、レミくんと2人でいた時の本当に心から笑ってる笑顔じゃ全然なくて辛かった。笑ってるのに時折真顔に戻る感じ、周りの雰囲気や表情を目ざとく伺ってる感じが印象的。
映画の後半は割と本気で笑ってる?って感じるぐらい学校で笑ってるシーンも多かったけど、雪合戦してたり、思いっきり走ってたり、なんか体を動かして何もかも忘れてる時だけ割と口を開けて声出して笑っているなと思った。レミくんが居なくなってから、周りに合わせて笑うことに慣れて来て愛想笑いもほんとの笑顔ぐらい笑えるようになったのかな…?それともそういうことに本気で笑っちゃうような性格に変わって行ったのか…?とか思ってしまった。
レミくんが居なくなってから、アイスホッケーをただただしてるシーンとか、無心で仕事を手伝ってるレオくんのシーンが多かったのも、心を無にして体を動かしとかないとレミくんのことを考えてしまうからかもしれないなと思った。


⑤レオくんがレミくんを置いて学校に登校した日に、「なんで僕を置いて行ったの」って泣きながら取っ組み合いの喧嘩をしようとするレミくん本当に泣けた。このシーンまでにレオくんがレミくんに冷たくしたり、それに怒ってレミくんがレオくんにそっけない態度をとったりと気まずい雰囲気の描写がたくさんされていたけど、2人で自転車に乗って登校は絶対にしていたんだなと。それがレミくんの中でめちゃめちゃ大切な時間で、レオくんとの距離がどんどん離れていっていてもその時間だけは隣に居ることの出来る時間だったんだなって思った。それさえも無くなってしまう、って思ってレミくんの何かがプツって切れたんだろうな。なんでこんなに大切なのに、レオだって僕のことをそう思ってくれてるはずなのに一緒にいちゃいけないのっていうレミくんの心の叫びを感じた。
レオくんは「登校が別々になるなんて大したことじゃないよ、レミもみんなとの話に混ざろう」って宥めるところが「レミも普通になろう、俺たち普通の関係になれるよ」って言ってるようで辛かった。周りに“普通”に観られたいレオくんとそんなことより前みたいにレオくんと一緒にいたいレミくん。泣きながら先生に止められているレミくんを見るレオくんの顔が、悲しそうな、憐れむような、なんとも言えない表情をしていて切なくなった。どういう感情だったんだろう、完全に読み取れないし描写しない感じ良かった。


⑤レミくんが死んでしまった、とお母さんから聞いた時のレオくんの顔がほんとうにしんどすぎて泣いた。「もういないの」と言われてから凄い勢いでレミくんの家に走っていくレオくんを観ながら苦しすぎてこっちが死ぬかと思った。なんでって気持ちと、僕のせいだって気持ちと、信じたくないって気持ちがごちゃ混ぜになってる表情だった。
レミくんの家のシャワールームの鍵がこじ開けられていたので、お風呂にお湯溜めて手首切って自殺したのかな…とか考えてしまった。自分の家に帰る帰り道のシーンも暗闇の中、レオくの涙のたまった目だけが反射してきらきらしていて、泣くのを我慢しながら家に帰っているのが分かった。

⑥レミくんが亡くなってから、言葉には全くしていないけどずっと「僕のせいだ」って責め続けながら生活しているレオくんが本当に辛い。レミくんが死んでしまってからは、レオくんが朝ベッドの上で目を開くシーンから始まることが多かったんだけど、いつも目を覚ますたびにレオくんはいつもなんとも言えない表情をしていたのが印象的だった。学校に通い始めるまでは家族がたまにはこっちにも帰って来なさいよっていうぐらいレミくんの家に泊まっていたみたいだし、朝起きるたびに「レミは隣に寝てないし、もうこの世界にもいないんだな」って絶望してそうだなって勝手に思って泣いてた。

⑦レミくんが自殺したことで始まったっぽい学校のカウンセリング?みたいなのにキレるレオくんのシーンも辛かった。「何か話したいことはない?」とカウンセリングの先生に聞かれても「無いです」と自分は答えるけど、クラスメイトが「レミは優しくて、ハッピーなやつで…」ってスラスラ語ってると「なんでそんなことわかるの」ってキレて教室を出ていくレオくんに心の揺れを感じた。最愛の親友のことをお前なんかにわかるものかっていう怒りと、自分自身もレミが何を思って死んでしまったのか完全にはわからない辛さと、きっと俺が突き放したからだっていう絶望感。しんどい。

⑧別のクラスメイトの家に泊まって、「やっぱりレミくんと同じ感情になる相手はいない」って実感してるっぽいレオくんの描写良かった。決してレオくんがつまらなそうなわけではないけど、2人でテレビゲームをしている時、レオくんもその友達も画面しか見てなくて、オーボエを吹いてるレミくんのことはあんなに顔や表情見てたのに…ってなった。寝る時も当たり前のように別々のベッドで寝てて、その時のレオくんの表情が、何も言わないけど「やっぱりレミとは違うな…」って言ってるように見えた。


⑨ずっと自分の家族にも、クラスメイトにも、先生にも言えなかった「レミが死んだのは僕のせいだ」って気持ちを、レミくんのお母さんに告白するところ本当にしんどかった。一度多分言おうとしてレミくんの家に会いにいくんだけど、レミくんの部屋に入って泣きそうになっているレオくんを観ながら「何があったの?」ってレミくんのお母さんに聞かれて、泣きながら雨の中逃げて帰って来てしまうレオくん。大好きなレミくんが自分のせいで死んでしまったことに向き合うのは本当にしんどい。
そのあと意を決して職場にまで会いに行って伝えたレオくんの決意、ほんとうに頑張ったねって抱きしめてあげたい…って泣いてたらレミくんのお母さんがレオくんを泣きながら抱きしめてくれて私も泣いた。
レミくんのお母さんにとってレオくんはレミくんとおんなじぐらい大切で息子みたいな存在で、でもレオくんが突き放したから自分の息子が死んでしまったのかもしれないって思うと…本当にやりきれない…。レオくんが車の助手席で「僕が原因だ。僕が突き放したから」って泣きながら告白してから、凄い長い間目に涙を溜めてレオくんを無言で見つめるレミくんのお母さんのシーン、号泣しました。

⑩1番最後の、レオくんがレミくんの死んだシャワールームの扉をガラス越しに見に行って、その後花畑に向かって歩いて行ってレミくんの家の方向を振り返るシーン、レオくんは何を想ってその表情をしているんだろう…と最後まで考えさせてくれる良いカットだった。
今でも会いたい、好きだよ、大切だよって想っているようにも見えるし、「僕のせいだ」って気持ちを今でも抱えて責めているようにも見えるし、レミくんが居なくなって死ぬほど悲しいけど「やっと僕は普通になれる」って晴れやかな表情にも見えるし……。その全てを内包した表情なのかもしれないしどれでもない感情を表してるのかもしれない……。
アイスホッケーと仕事の手伝いで最初より少し体つきが逞しくなって肌も焼けているのも、背景は最初2人で楽しく走り回っていた花畑と同じなのに、その頃と対比して時間が経って成長しているレオくんを感じさせました。成長してレミくんの死を乗り越えたレオくんは今何を想っているの……。とても良かったです……。


個人的な話になるのですが、「他人や周りの人には理解されないけど当人同士にはめちゃめちゃ固い絆、でもその関係性に当てはまる名前は無い」みたいな関係性が本当に刺さる人間なので、映画の内容最初から最後までずっと刺さり続けました。笑 しかもその関係性が周りの人に理解されない・みんなとは違うせいでどんどんすれ違っていくので本当に救いがなくてしんどかった。最高でした。この監督さん?脚本の方?の他の映画も気になってしまったので今後もぜひ観たいです。素敵な映画をありがとうございました。
き