sakura

CLOSE/クロースのsakuraのネタバレレビュー・内容・結末

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

見終えたあとに、『Girl/ガール』の監督だったと知ってびっくり。同ジャンルの作品をかなり多く観ているけれど、ダントツで忘れられない印象的な作品。

そして本作もまた、ヒリヒリと印象的な作品。
わたしは幼稚園の頃からバレンタインには好きな男の子に手作りお菓子を持っていくような子どもだったので、自らのジェンダーアイデンティティや恋愛対象・性対象に一切迷うことも戸惑うこともなくここまで生きてきているけれど、
それでも「わたしが今相手に対して抱いている思いや感情を適切に表現する端的な言葉の無さ」に途方に暮れたことはある。なんなら日々途方に暮れている。

だからたぶん、友情なのか恋愛なのか、とか、同性愛者だから異性愛者だから、とかそういう問題じゃないのだと思う。
彼らと同じ経験はしていないけれど、そのしんどさわかるよ、と思いは共有したい。

自分が原因だったのではないか。自分は彼をどう思っていたのか。その答えは作中で明かされないことはもちろん、きっとレオのこの先の人生でもはっきりと明らかになって割り切れることはないだろう。
そのような割り切れなさや喪失感を抱えてそれでも日々くる明日を生きるには、彼はまだあまりに幼くて、後半の学校で遊ぶシーンが苦しい。

唯一救いだと感じたのは、レオの周りの大人はみんな優しくてあたたかいこと。映像作品だから、と味気ないことを言ってしまえばそれまでだが、抱きしめてくれる大人(未成年であろうお兄ちゃんも含め)がいることは彼にとって大きな救いだろうなあと思う。
わたしは親でも妹でも娘でも友人でも、恋愛対象として愛のある人間以外との接触に抵抗があるので、自分が冷たい人間に思えるのと同時に、だからこそより一層 作中の人物のあたたかさを感じた。
わたしは然るべき人が然るべき状況にあるときに、“抱きしめる”以外の、愛を伝え安心を与える術を持てるだろうか。
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