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CLOSE/クロースのakrutmのレビュー・感想・評価

CLOSE/クロース(2022年製作の映画)
4.9
同級生からカップルと疑われたことで、とても仲の良い幼馴染と距離を置くようになった少年に起こった予期せぬ悲劇を描いた、ルーカス・ドン監督のドラマ映画。

この映画はすごい。これだけ素晴らしい映画に出会ったのは、久しぶりな気がする。ストーリーはごくシンプルに、とにかく自責の念に駆られて精神的にギリギリの状態に置かれた13歳の少年レオの心情をこれでもかと言うほど執拗に描くスタイルがとてもうまく機能している。色とりどりの花畑を背景に少年たちが描かれている映像も美しく、さらに季節を反映する風景がレオの心情とシンクロしているのも見逃せない。こんな直情的な表現をされると、揺さぶられるという言葉ではその程度が伝わらないほど心が揺さぶられてしまう。特に、レオを演じるエデン・ダンブリンの大きくて特徴的な目から涙がこぼれ落ちるシーンがとても印象的で、思わず落涙してしまう。

ルーカス・ドン監督へのインタビューによると、電車に乗っているときに見かけたエデン・ダンブリンの大きな目に惹かれて、この役にスカウトしたらしい。それが本当に成功している。また、自分の人生に大きな影響を与えた作品として『オルランド』をあげていて、主演のティルダ・スウィントンは憧れの俳優だという。ティルダ・スウィントンも目がとても印象的で、ユニセックス的な雰囲気が魅力の俳優なので、監督の選好が本作に深く反映していることがわかる。

本作のもうひとつのテーマとして、少年時代の男性どうしの親密さと、セクシュアル・アイデンティティの微妙な関係やステレオタイプ的な見方との対立があるだろう。監督自身もこういう経験をしたことがあり、映画のテーマとして取り上げたかったそうである。でも個人的には、このテーマは本作の素晴らしさにほとんど影響を与えていないと思う。あくまでも、大人のような解決策を取れずに悩みを内面に抱え込んでしまう少年の心情がテーマなのである。

被写界深度を浅くして特定の人物だけを焦点を当てる映像を多用しているのも本作の特徴と言えるが、個人的にはちょっと目が疲れてしまったので、少し減点。ここまで多用しなくても、とは思う。

レミの母親を演じたエミリー・ドゥケンヌが、ダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』でロゼッタを演じた女優だとは、見ているときには気付かなかった。もうそんな役を演じる年齢になったのね。
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