悲惨な目に遭いながらも腐らずたくましく生きる疑似姉弟に苦しくなるダルデンヌ兄弟らしい社会派ドラマ
子供の視座から(まなざしを通して)社会の残酷さを描いては、観客を何ともやるせない気持ちにする達人・社会派監督ダルデンヌ兄弟。(時折、鼻につくけど)観客に共感させてヒューマニズムの点から告発するため。子供たちへの演出による自然さと、ハンディによるドキュメンタリータッチな空気。ダルデンヌ兄弟の作家性的にも絶対に報われないだろと、残酷な運命が待っていやしないかと見ていてヒヤヒヤする。フォカッチャは?
最初の質問シーンから目を離せない力強さ。ボートで出会って血のつながらないながらも、たくましく生きようとする偽装姉弟・疑似家族。懸命に生きようとする子供たちを身勝手に搾取する大人たちという図式を開始早々から端的に表すカラオケシーン2曲それぞれ支え合うこととより大きなものが弱肉強食を歌った歌詞。教会に来い。むしり取れるだけむしり取ろうと寄生虫のようにたかり続けるガメつい仲介業者がしつこくつきまとってはお金を巻き上げたり、大麻ビジネスの元締めらしき野郎は性的に搾取したり、気持ちを分かろうともせずむしろ弱みにつけ入っては尊厳を踏みにじろうとする身勝手な大人たちがこれでもかと突きつけてくる、過酷な現実。それでも折れない!!
家族のために稼ぐ重圧を背負いながら、ビザが下りないプレッシャーにも日々押しつぶされそうなロキタの泣きそうな顔が印象的で、忘れられない。大麻の売人として危険な橋を渡って、それもこれもすべては2人のささやか幸せの未来のため、気のおかしくなりそうな大麻の世話係の仕事。それもこれもビザを取って家事ヘルパーになって2人で暮らす、そんな夢を抱えては健気な姉と真っ直ぐな弟、ひたむきに生きては互いに思い合う強い気持ち。ロキタ!ロキタ!姉に会いたい一心で施設を破壊していくのが印象的だった。雑なほど突如としてやってくる(ゆえに際立つ)最後の無情さ…それまで積み上げてきたものがあるから胸が張り裂けそうになる。
SIMカード「私は汚い」「汚いのはアイツの方だ」「ママにいてほしい」「僕がいる」