がんさ

聖地には蜘蛛が巣を張るのがんさのレビュー・感想・評価

聖地には蜘蛛が巣を張る(2022年製作の映画)
4.5
イランの聖地で起きた、娼婦の連続殺人事件を、犯人・それを調査するジャーナリストそれぞれの視点で追っていくお話。

※エンタメ性は皆無。

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価値観がぐらぐらに揺らいでしまった。見知らぬ土地であまりに異なる文化に触れたときみたいに…

何が起きているのかは頭が分かっても、ものごとが、わたしの親しんできた因果律にちっとも当てはまってくれないから、終始、一体何が起きているんだ!?と困惑しっぱなし汗

本作は結びに向けて、お粗末なミスリードが用意されるのだが、未知の主義主張を浴び続けたわたしは、無理筋が見えないくらいには、しっかり心をやられてしまっていた…汗

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本作では犯行の一部始終が克明に描写される。首を絞められた女性が、必死で抵抗し、目が充血し切って、最後には手足が弛緩する。

しかも命を奪われるのはどこかの誰かではなく、子供を寝かしつけて、覚悟を持って夜の街角に立つひとりの女性であり、

命を奪うのも、幸せな家庭を持ち、誠実に仕事に従事するひとりの男性。

そしてそれを追うジャーナリストもみな、この時代と街、国越しに地続きだった。本作では残酷なほど克明に、その連帯が映し出される。宗教的なことや、細かな所作の意図が汲めずとも、現実感があった。

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英題は、Holy Spiderとなっている。

聖なる蜘蛛…矛盾を孕むような、多くの意味を見出せそうなこのタイトルに、本作のスタンスを強く感じた。

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ルック1.0
シナリオ1.0
役者1.0
深度1.0

リスクを負って製作された姿勢に敬意を。+0.5
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