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ノー・シャークのYSKのレビュー・感想・評価

ノー・シャーク(2022年製作の映画)
4.3
サメ映画にも関わらずサメが出ないということで、今までは「サメさえ出ればサメ映画」だと(凡そ理解しがたい)主張を繰り広げてきたサメ映画愛好家たちですら度肝を抜く作品が出てしまいました

とはいえですね、『ジョーズinJapan』や『サメデター』『エクソシストシャーク』など、あたかもサメが出ているフリをしながら実はろくすっぽ出ていない作品は枚挙に暇がないわけですが、とはいえ「出ると言いながら出ない」と「出ない」は大違いですし、それが5分だろうと1分だろうと10秒だろうと、出ると出ないでは天と地ほどの差があることは明確なわけです
しかしサメが出ない映画は本当にサメ映画なのだろうか、その謎を解明するため我々調査隊はアマゾンの奥地へ向かったのであった

「サメに食われて死にたい」という(精神に何らかの病を抱えていることが想像に難くない)悩みをもつ女性主人公が、全国各地のビーチに佇みながら自分がいかに美しくいかに面白くいかに魅力的か、周囲にいる水着の女性を品定めし彼女らと比較しどれだけ優れているかという独白を約2時間続ける、あまりにもキチガイじみた非常に恐ろしい作品でした
約2時間、正確には1時間49分の間延々と早口でただしゃべり続ける、こんな脚本を書くヤツも書くヤツですし、読み上げる演者も正気ではないでしょう

「サメに食われたい」と願いながらもサメが出そうにないニューヨークあたりの浜辺で佇みながらビーチの女性を物色する、すでに手段も目的も崩壊していそうな気配すら感じながらも、最終盤になれば衝撃的な展開も用意されており、ただの精神異常者ではないことまでわかります
そして、こういうものだと知った上で見るのであればレンタル料も決して高くは感じないでしょう、少なくとも私は感じませんでした

これはもしかしたらサメ映画の好事家たちへの挑戦状かもしれませんし、サメ映画の好事家たちの末路かもしれませんし、昨今の(主にコンマビジョンの)サメ映画にたいし「やべえwwww」と知った風な口をきく我々へのアンチテーゼかもしれません
しかしこの作品を視聴した我々の頭と心はサメで満たされたに違いありませんし、この作品はサメ映画に違いないのです
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