うかりシネマ

ゴールデンカムイのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

ゴールデンカムイ(2024年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

第一幕はウェンカムイ戦、第二幕は尾形戦・谷垣戦、第三幕は杉元奪還で構成されており、その合間にもサブエピソードを挿入し、ほとんど原作そのまま映像化している。
ハイロー(〜ザワ)監督だけあって漫画チックなアクションは素晴らしく、見栄とリアルさのバランスも名前のテロップ芸も完璧で、現代日本でビッグバジェットでアクションをやる最適解になっている。
細かいところでは“ルッソテロップ”を邦画に転用しているのは初めて見たので嬉しかった(メインクレジットといい、ハリウッド映画をかなり意識しているはず)。

ストーリーとしては詰め込みすぎで、そもそも尾形と谷垣が連続で襲ってくる時点で忙しなく、連載漫画ならともかく、一本の映画として考えると章ごとのゴールがないまま常にピークを維持し続けているので、クライマックスに向けた盛り上がりに欠ける。
とはいえ第七師団戦はオリジナルでアクションを盛りまくった結果、原作よりも漫画みたいなバトルが増えて満足。
梅ちゃんの回想がラストまで引っ張ったせいで冗長になっていたのは残念。クライマックスの勢いのまま少しウェットにして終わればよかったが、重めの回想でテンポを殺して終わるのでもたついている。

ヒグマのCGはちゃんと出来がいいし、着ぐるみパートも見てられるが、レタラは軽すぎる。
登場人物も顔はちゃんと汚いのに、衣装はどれも下ろしたてで洗剤の香りがしそうなほどツルツル。激しいアクションをしても血の一滴もつかない。
暴力的なシーンはカメラの外でするし、汚い言葉も一切出てこない。「結核」すらアウトなのか「肺病」に置き換えられてしまっている。
原作の闇鍋感は再現していながら、全年齢向けにアクを徹底的に除いた“よそゆき”の綺麗さだった。

アイヌの風俗に関しては原作以上に作り込まれていて、これは綺麗さがいい方向に働いていた。時代・文化の考証をこのレベルでやれてるのは偉い。
アイヌ語のテロップは万人に向けた分かりやすさのためなんだろうが、過剰で馬鹿向けに感じた。「チタタプ」のような日常・コメディのシーンならともかく、「ウェンカムイ」みたいなシリアスなものを入れるのは台無し。日露戦争では年代だったのが本編開始時に「二年後」というテロップになっているのも観客を信用しておらず、馬鹿が観ることを想定しているのが不快。

この規模でやるならどうしてもレイティングはなくしたいだろうし、誰がやってもマイルドになる、詰め込みすぎになるだろうし、その上でアクションを盛ることに重点を置いたのは正解だと思う。

ミッドクレジット1は刀を振り回すより男子が好きなもので、勃起。尾形も谷垣も土方も一本の映画としては不要だが、ここまで「続編やります」を見せられては黙るしかない。よくも悪くも原作まんまをなぞる、「よく」が出ていた。
ミッドクレジット2はただのギャグパートなんだけど、本編ラストに引用された言葉と相まって「差別は無知から生まれる」というテーゼを語っているのが技あり。