クシーくん

クリスタル殺人事件のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

クリスタル殺人事件(1980年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

アガサ・クリスティ原作「鏡は横にひび割れて」の映画化。ミス・マープル作品なので、セント・メアリ・ミードの長閑で美しいイギリスの田舎町に眼福。テイラーの豪華な衣装や、マープルの甥のクラドック警部の渋い仕立てのスーツも素晴らしい。今なら2時間ドラマで消費されてしまいそうな内容ではあるが、映画の予算でやってくれたお陰でこれだけの物が観られたと考えれば正解。

犯人は予想がついてしまったが、動機は分からなかった。ちゃんと伏線も丁寧に張られていて、聖母子像をE・テイラーが凝視した理由にも納得のいく筋は流石ミステリーの女王、見事なプロットである。動機を見るとまるで横溝正史作品のようだ。英国の田舎町の閑静な雰囲気に流されそうになるが、冷静に考えるとかなり辛い、悲しい話。

トニー・カーティスやロック・ハドソンなど大物も数多く出演する豪華なキャスティングだが、エリザベス・テイラーでもっている映画と言っても差し支えない。比較的彼女が若い頃の作品しか観れていないのだが、当時48歳のテイラーは若い頃よりもより魅力的な演技になっていた。もっと後年の作品もこれから観ていきたい所。たるみはドリス・デイの所に行け、は笑った。マザーグースの替え歌という洒落も効いている。

アンジェラ・ランズベリーのマープルは少しイメージと違ったものの、貫禄と演技力でカバーされていた。キム・ノヴァクの下品さは笑ったが、「愛情物語」や「めまい」に出演していた頃の麗しい姿とは似ても似つかない、まるでアリダ・ヴァリ並みの変貌ぶり。G・チャップリンが死ぬ時の表情も凄まじい。私も重度の花粉症なので、あんな死に方は凄いイヤ。

しかし…この邦題「クリスタル殺人事件」だが、全然クリスタルなんて出てこないのに、何故?と思ったが、どうも当時田中康夫の「なんとなく、クリスタル」が売れてたので、鏡とクリスタルを無理やりこじつけたようだ。こういうのは余り感心しないなあ…
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