探偵業が仕事のポアロとはそもそも立ち位置が違う、クリスティのもう一人の主役であるマープルが安楽椅子探偵として活躍するミステリー。
マープルはおらが町の単なるミステリー好きの老婦人と言う立ち位置のため、関わる事件は本来限定的なもの。住む町の中とか、あるいは旅先、友人宅の近所等活躍領域が狭い範囲内となり、現場介入なんてもってのほか。
今回は甥であるロンドン警視庁のクラドック警部から事件の詳細を聞き、推理力を働かせ事件を解決へと導きます。
とにもかくにも、先ず原作「鏡は横にひび割れて」なのに、公開年に流行語にもなった『なんとなくクリスタル』に乗っかったとしか思えない邦題に矜持の意味を宣伝部へ問い合わせしたかった今日この頃。
今作は40年以上前の時点で往年の名優たちが顔を揃えた豪華俳優陣の競演が最も見どころでしょう。
エリザベス・テーラーとキム・ノヴァクが同じフレーム内に収まる画なんて、なんと絢爛豪華たるや。
男優陣も負けず劣らずなんですが、しかし、逆に言うとそんな俳優知りません、て世代の人が観ても懐かしい情感は沸いてこないので、旬が過ぎた名優たちのドラマに興味が宿るのかは疑問ですが。
ただ、地味な殺人事件ながら、その後も第2、第3の殺人事件が次々と起きて、何のために?犯人は誰?の謎への興味が尽きない構成となっております。
どうしても、画が異国情緒たっぷりな、ポワロが活躍する豪華客船でヴァーチャルエジプト観光のツアーに参加した感覚になる『ナイル殺人事件』やリゾートホテルでゆったりと夏の余暇を過ごした感の『地中海殺人事件』等と違い、画的に動きが少ない作品ですが、極めてオーソドックスなミステリーを楽しめる作品だと思います。
ちなみにマープルはTVシリーズを踏破してる手前、個人的には上品なマープルを作り上げたジェラルディン・マクイーワンで観たかったなぁ。