ボブおじさん

ノック 終末の訪問者のボブおじさんのレビュー・感想・評価

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.5
「シックス・センス」の満塁ホームランで鮮烈なデビューを放ち。久々の大型新人と期待されながら、その後、凡打と単打を繰り返し、気がつけばメンバー表の下位打線に名を連ねている崖っぷちの元天才ルーキー。

シャマラン監督に抱く私のイメージは、そんなところだ。このままベンチに追いやられるかと思っていたところ、最近の「ミスター・ガラス」「オールド」は、まずまずの出来だったので、まだ見捨ててはいない😅

本作は詰まりながらも辛うじて内野の頭を超えた渋いヒットというところか。

原題は「Knock at the Cabin」だから〝山小屋の訪問者〟だが、邦題は原作小説の「The Cabin at The End of The World」から取ったのだろう。

幼い女の子と両親は、人里離れた森の中にある山小屋に休日を過ごすためにやって来る。そこへ武器を手にした見知らぬ男女4人が突然現れ、ドアや窓を破って侵入。謎の人物たちに捕らえられた家族は、自分たちの選択次第で世界は滅びると告げられ、家族の犠牲か世界の終わりかという究極の選択を迫られる不条理スリラー。

この手のスリラー映画で命を狙われるのは、若い男女のカップルが相場だが、男性同士のカップルとアジア系養女の3人家族といかにも〝今風〟にアップデートされている。

この設定がストーリーに影響を及ぼすのか?〝世界の終末を阻止したい〟という彼らの真の目的は何なのか?期待を抱き見ていたが…。

正体不明の4人組の不気味さ、中でも元WWEの人気レスラーで、今やすっかり役者として定着したデイヴ・バウティスタの巨体が醸し出す圧力が緊張感を高める前半は良かったのだが、あっと驚く様などんでん返しもなく、想定の範囲で話が進む後半はやや尻つぼみ😢

サブスクで見るには良かったが、〝劇場で観ればよかった〟とはならなかった。冒頭の例えに戻れば、スタメン落ちは免れたが下位打線からの脱出とはならなかった。

あの日見た美しいホームランは、幻だったのか?いつかまた、目の覚める様な一発をスタンドに放り込んでくれる日が来るのだろうか?



〈余談ですが〉
こんなにしゃべるデイヴ・バウティスタ見たことない😅

レスラー出身の俳優は、昔からアクション映画などを中心に存在していた。古くは「現金に手を出すな」(1954)のリノ・ヴェンチェラや「007 ゴールドフィンガー」(1964)の悪役オッドジョブのハロルド坂田など。(例えが古すぎ😅)

その後も現在まで、途切れることなくレスラー俳優は、出演してるが、そのほとんどは、ギャング・用心棒・軍人・殺し屋など、その恵まれた肉体と威圧感を生かした、口数の少ない悪役やアクションを期待されての起用だった。

レスラー出身俳優の頂点は、言うまでもなく〝ロック様〟ことドウェイン・ジョンソンで、レスラー俳優を脇役から主役に押し上げた最大の功労者だが、その彼でさえ期待されているのは、圧巻の肉体を使ったアクションだ。

ところが本作でのバウティスタは、巨体から滲み出る圧力は見せるものの、アクションシーンは、驚くほど少ない。やわらかい物腰で、諭す様に話す姿は小学校の先生そのもの。

ドウェイン・ジョンソンら今までのレスラー出身俳優の型にハマったステレオタイプからの脱却を図り、新たな境地を切り開こうとしているように感じた😊