くらげ

ノック 終末の訪問者のくらげのネタバレレビュー・内容・結末

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

一人称視点でクローズアップな画角、ピントの移動がレトロで、呼吸を思い出した頃に虫たちの声が耳に再び耳に飛び込んでくる臨場感。
それら全てのせいで我が事のように迫ってくる恐怖。
狭い空間のバッタは共食いのメタファーだけれど、ホラーとして少々ミスリードしてくるトラップかな?飢饉としてのイナゴ?
虫の声、魔女の宅急便、津波、辺りに日本の雰囲気を感じたり。

神的な何者かが何らかの意図で4人にビジョンを見せたなら人選が悪い。
エリックみたいに何とか解釈を試みてくれるなら幸いだし、それも織り込み済みならアレだけど、レナードがイカつ過ぎる。
知的メガネだけど刺青まみれのパツパツマッチョ。
それに以前に傷害致傷で接点のあったホモフォビア疑惑の酔っ払いも最悪。
それもこれも護身の拳銃、エリックの犠牲に繋がってるなら、全て運命?
聖書モチーフなのにゲイカップルに背負わせる辺りも辛すぎる。
こちら方面に明るい方の感想を知りたいな。
4人と残りの3人、7回のノック。
エッセンスは分かるんだが解釈が届かないのが悔しい。

エリック犠牲の時点でも疑う余地はあっただろうし、3人で生きる選択も出来た気がするけど、終末がどうのこうの以前にストレスで極限だったんじゃないかとも思う。
撃てるのか?
もっともっと壊滅的な出来事がバチバチ眼の前で起こらないと納得がいかないっすよ。
全部偶然でした、で済まされそうなラインを超えていない。

とてもじゃないけれど、選択させることが神の試練だった、なんて思いたくない。
キリスト教の教義の悪い所だよね。信じない者は救われない。
結局は全員が犠牲を払っていて、それで原罪がどうこうなるのか全く分からん。
出来事の全てが理不尽で許せん。
神め!!
訪問者は順番に殉死していく訳だけれど、あれが無いとどうなるの?
破滅が一気に進むの?
神め!!

ビジョンの正体にも触れられることはなく、訪問してきた4人が強い目的意識に芽生える過程も描かれず、理解するだけの時間も与えられず、あそこの家族と共に「こいつらガチでイカれてるぜ…」と震えることしか出来なかった。
確かにレナード役の方の口の震えとか、ガチだからこそガチで怖い感じはスバラシイ演技だった。
そんなに大事なら家族の方にも最初からたっぷりビジョンを見せれば良いじゃん。

出来事とは別に描かれる彼ら家族の半生。
家族の不理解、カップルと隠しての養子の受け入れ、ヘイトクライム。
2人の性格が充分に描かれ、最後の選択の予兆として効いてくる。
ウェン嬢も2人の子!聡明で良いキャラだった。
見つめ合う、つまりカメラ目線のエリックとアンドリューの愛情深い眼差しは本当に美しかったなぁ。

自己紹介システムも聞かされた所でこっちとしては知ったこっちゃないんだけど、限られた登場人物の中で全ての人にドラマがあることを思い知らせるには効果充分、究極の不条理の中で利他主義、それを期待する心情、愛の形や真価を問うてくる。
荒業にも思える作りなのに、仕掛けに富んでいて、暗澹たる気持ちの中に言い表しにくい余韻の残る映画でした。
アマゾンの映画、ジャンル説明に「思慮深い」って表記されていて、確かに、と膝を打ったのです。

四騎士側が家族の元に辿り着くまでのストーリーと、世界破滅ルートも観たかったな。
後者は家族の絆の強さと美しさだけを描いてしまってつまらないかも知れないけれど。
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