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ノック 終末の訪問者のrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

謎の4人組に襲われる一家の話。

最初はホームインベーション・スリラーが始まるのかと思いきや、「世界を救う為の犠牲になる者を選ばせる」という一風変わった展開へ。

4人の侵入者の真偽が不明で、カルト狂信者や陰謀論者にも見えるのは、なかなか現代的なテーマだなと思いました。
彼らはニュース映像を根拠に自分達の言い分を正当化させるわけですが、これもどこまで信じていいのか分からないわけで。
必然の様にも見えるし、ただの偶然が重なっただけの様にも見える。
コロナ禍以降の何を信じていいのか分からない不信感…それ故にデマや陰謀論が跋扈する世相を上手く反映していたのではないでしょうか。

ただ、その一方で映画としては、あまり面白くなかったです。
特に中盤以降は、侵入者が一家を説得させる展開が続くのですが、シャマランらしいサプライズも起きず、延々と膠着状態が続くんですよね。
もっと、あの手この手で一家を揺さぶるのかと思ったら、侵入者が1人ずつ自決するぐらいなので物足りなく感じました。

勿論、最初の自決には驚かされましたが、自分の命を賭けるって、説得のカードとしては切り札中の切り札だと思うんですよ。
その切り札を最初に出してしまったが故に、それを越えるカードを出せなかったのかなと。
また、侵入者が自決すると災害が始まるのも、よく分からない部分で。
死んだら災害が起こるのなら、生きていた方が良いと思うんですけど、どういう理屈で自決するのか、ちょっと説明不足だった気がします。

最終的に一家の1人が犠牲になりますが、「差別されてきたゲイの男が英雄になる」という見方が出来る一方、「家族が陰謀論者になってしまった」という悲劇でもあって。
ある意味で、陰謀論を肯定する様な描き方は引っ掛かるものがありましたね。
本国では終末論者やゲイの扱い方などでも議論になったそうですが、シャマランの無邪気さが悪い方に出てしまったのかもしれません。

シャマラン映画には終末がモチーフになる事も多いのですが、そうした作品はどちらかというと苦手で。
風呂敷を広げすぎると、ノイズやツッコミどころも増えるし、シャマラン節も強くなって、好き嫌いが分かれる傾向にあるんじゃないかなと。
個人的には『ヴィジット』や『オールド』の様な、小さな世界だけで完結する作品が好きなので、次作は良い意味で、こじんまりとした作品を期待しています。
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