「ぜんぶ売女よりマシ」というタイトルが重い。
「売春は悪」という発想は一見正しいし、
売春が非合法であることは理にかなっているように見えるけれど、
本当にそれを先進的にリードしてきた国で
女性、そして子どもの人権がどう蹂躙されているか、
あまりにも象徴的というか
本当に行き過ぎてるようにしか見えない例を取り上げ、
本当にこれでいいのかを見る側に問う。
数年前に読んだ本の中で、
風俗業界で働く女性を長年取材してきた著者は
女性たちの人権を守るためにこそ一定の合法化は必要だと書いていた。
それは私には衝撃ではあったけれど、
たしかに世界から売春はなくならない。
そして風俗業界はセーフティネットの役割も担ってしまっていて、
まさに今作の主人公も生きるために売春を選んだのだ。
私がこの問題に非常にシンパシーを抱くのは
私が仕事で不登校を扱っているせいもある。
社会的に「悪」というレッテルを貼られた行為、行為者に対してなら
社会は何をしてもいいと蓋をする。
それは薬物依存もそうだし、
さまざまな前科者に対しても言えることだが、
一般的に悪い方向に踏み込んだ者を
救い出すよりも叩くことに注力する。
なぜそうなったか、といった背景は無視され、
結果だけをしつこく断罪され続ける。
異常だ。
このスウェーデンのケースを見れば誰だってわかる。
でもこれが世界の「モデル」となっている。
共産主義がそうだったように
福祉国家も人間の手には負えない。
マジで絶望するしかない作品だった。