すずや

ヒンターラントのすずやのレビュー・感想・評価

ヒンターラント(2021年製作の映画)
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戦地帰りの人間の見る現実と悪夢を全力で表現する画面に圧倒されてしまった。

WW1から帰ったら国がなくなっていて、収容所での暮らしを抜け出せた自分たちを歓迎する人たちもいない。今見ているこの街並みは悪夢そのものじゃないか?と…
ペーターとセヴェリンの関係性の間にある、絶対に乗り越え得ない薄らとした線がすごくしんどい。戦地帰りの人間が見る悪夢のことなんて、知らない人間は知らなくていい。そう振る舞うペーターの姿に、殺人や虐待に走る人間臭さに対する、一縷の希望としての優しさ、善性を見るようだった。
セヴェリンが、知っていたのにどうして黙ってたんだ、って泣きながらペーターに縋るシーンが好きで。決してセヴェリンがペーターの見る世界を見ることはないけれど…それでもセヴェリンがペーターに縋るのは、まだあなたにだって優しさは、善性は残っているんだ、と伝えようとしているのかな、と思ったり…
結局のところ人間は善を捨てきれない、って思ってるんじゃないかな、この映画…
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