むさじー

あいたくて あいたくて あいたくてのむさじーのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

<出会いの奇跡と人生再出発の物語>

1年前に大切な伴侶と別れた中年の男女が、ネットでの些細な言い争いから会話を始めて、他愛のない身辺の私事を綴るうちに、互いに悩みを打ち明け支え合う存在になっていく。やがて相手に興味が湧いて、たまらなく会いたくなって顔を合わせ、愛を確信するまでの心の軌跡がメールのやり取りで丁寧に描かれる。
また、食堂を営む女は亡夫の味を引き継ぎたいと願い、男は家具職人として師匠の技に追いつきたいと願っている。そして二人は人から人へ脈々と受け継がれる伝承世界に、人生後半の楽しみ、生きる希望を見いだすのだった。
不器用な恋愛あり、情感のこもった濡れ場あり、脇キャラが絡んで人情喜劇風に展開する。役者陣も、丸純子の生活感あふれる可愛らしさと浜田学の生真面目善人の朴訥さが絶妙な存在感で、いい味わいを生んでいた。
以前、同監督の『つぐない 新宿ゴールデン街の女』を観た時、中年男女の恋愛の機微、切ない大人の別れ、心のヒダを描くのがうまいと感じていた。同作は過去を背負った中年男女4人が思いを秘めながらすれ違っていく、そんな人生模様を情感たっぷりに昭和の雰囲気で描いていたが、本作はネット繋がりなのでより今風。共に人の体温が感じられ、緩さの中にぬくもりがある。
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