幽斎

海上48hours ―悪夢のバカンス―の幽斎のレビュー・感想・評価

3.8
バカンスでハメを外す大学生バカップル(死語)4人+真面目1人。大海原で故障した1台の水上バイクで漂流するハメに。凶暴なホオジロザメとの決死の覚悟を余儀なくされた海洋サヴァイバル・スリラー。Tジョイ京都で鑑賞。

私と付き合いの長いフォロワーさんなら「幽斎がサメ映画?気でも触れたのか」心配に為るかも。大丈夫、キレて無いです(笑)。一応本作はギリでスリラーと呼べる希少なサメ映画で私の大好きなイギリス映画。午後ローでお馴染みの荒唐無稽なサメ映画では無く、頭が複数有るとか空を飛ぶとか何故かゾンビに為る(見ない癖に詳しいじゃないか)ソウでは無くて、サメは至って普通に人間を噛む正統派スタイル。

「海底47m」製作陣は嘘では無く「ネバー・サレンダー 肉弾乱撃」James Nunn監督。「私の生涯1位「SAW」James WanでもJames Gunnでも無いが「海底47m」「海底47m 古代マヤの死の迷宮」第二班監督を務めた。配信で垂れ流してる素っ頓狂なサメ映画では無く、全国のシネコンでロードショーするか否かは映画館の支配人の趣味の問題。

Spring breakは単なる春休みでは無く、アメリカの大学生にはバケーションとは異なる意味が有った。私の父親世代にはLove and Peaceと言う文化が有り、フロリダ州フォート・ローダーデールに、全米の水泳部が集まるように為り、飲酒やセックスの乱痴気騒ぎが社会問題に発展。現在は親の貧困化等で学費が圧迫され、フィーヴァー(死語)至ってない。未だにバカンスだと思ってるのが真面目なイギリスらしい。

海洋スリラーと言えば「ジョーズ」起源で有る事は皆さんご存じ。近年では実話を基にした2003年「オープン・ウォーター」大ヒットで、ジャンルは復活。海はミステリー風に言えば死に直結する究極のクローズド・サークル。映画ではシチュエーション・スリラーとも言える。本作は地中海マルタ島で撮影されたが、逆に言えばソレだけで事足りるので、私達が思ってる以上に低予算で創れる。此れがサメ映画乱造の理由。

マルタで撮影と聞いて思い出したのが、2018年「ザ・ボート」。ハリウッドのジャンプスケアに頼る単調なホラーとは一味違う、水木しげるさんを彷彿とさせる妖怪奇談な希少なマルタ映画。登場人物は一人だけ、ボートに閉じ込められる「SAW」顔負けのシチュエーション。マルタには映画撮影用の世界最大の水槽が有り、国を挙げて税金面で優遇する事で、ロケ招致に力を入れてる。イタリアのシチリア島に面した風光明媚なロケーションだが、冷戦の終結を告げる歴史的なマルタ会談の舞台。今でもイギリス連邦に属してる。

「オープン・ウォーター」海に浮かんでるだけで映画を成立させたが、ソレの変化球として岩礁に美女が佇むだけの「ロスト・バケーション」。私の好きな「リヴァイアサン」とか「ザ・デプス」90年代は深海ホラーがブームで、本作は文字通り一周回って、動かない水上バイクにしがみ付くだけ。スキューバのライセンスを持つ友人が「ボートはファイバーで気泡なので半分に切られても、両方とも浮いてるぜ」だそうです。因みに京都にも「海」は有ります(笑)。

イギリスらしく、手堅くオーソドックスに徹した作りで、海に堕ちればサメの餌食、海の上では暑さと喉の乾きとの闘い。出来る事は限られるし、そもそも海ではスマホは繋がらない。20年前の「オープン・ウォーター」同様、起伏を盛る事で85分を何とか乗り切った。「赤い珊瑚礁 オープン・ウォーター」の様なグロは上品なイギリス映画だから無いと思うだろうが、意外とアル。名作「ジョーズ」だってスラッシャー映画、サメがムシャムシャ捕食するシーンを見れば「海ってヤッパリ危険な場所」思う筈。

本作に欠けてるのはスリラーに大切な「ツイスト」。私が監督なら辿り着いた岸は、上空から見ると実は無人島で陸地では無かった・・・とかね。ソレでも中国がハリウッドに作らせた荒唐無稽な「MEG ザ・モンスター」(続編にJason Statham続投でSienna Guillory参戦とかマジかよ)より、全然イケる事だけは間違いない。私は溺れない方法を知っている、ソレは「海」に行かない事(笑)。

Zoomオーディションで選ばれたヒロインHolly Earlの雄姿を貴方も確と見届けよう!。
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