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帰れない山のあんずのレビュー・感想・評価

帰れない山(2022年製作の映画)
4.1
主人公のピエトロ、山で知り合い親友になるブルーノ、そしてピエトロの父という3人の男性の生き方、特に山との関わりを中心にしたストーリー。夢を実現するブルーノ、迷い続けるピエトロ(青年期のピエトロがものすごくイケメンだった)、現実に折り合いをつけた父。先祖代々山の民で、時代錯誤と思われようが山での生活を迷わず選び、山が自分の全てと言わんばかりに山を愛するブルーノに憧れたけれども、現実はそう甘くなかった。

長いな、と何度か思ったのは、退屈ということではなく、自分がこの辺で終わりなんじゃないのかなという話の展開からまた二転三転したから。あまり情報を入れてなかったこともあり、ある女性(私が何となく直感的に苦手と思った人)が出て来た辺りから思いがけない方向に動き、先が読めなくなり、面白味が増した。

昔は断然海派だったが、最近は山もいいなと思う。っていうか、自然全般に癒される。この映画もとりあえず美しい山を見れたらと思って足を運んだ。そうしたら、ストーリーもちゃんと面白いし、こんなにも美しい山(アルプスだけでなくヒマラヤまで)をずっと見られる映画はなかなかないと大満足。山好きの方、おすすめです。

美しい景観の中で飲むワイン、食べるチーズやパンがとても美味しそうで、釣られて美味しいお酒を飲みに行ってしまった。原作も読んでみたい。

追記:そういえば、画面のアスペクト比がスタンダードだったのも印象的だった。少年期がそれで、大人になったらいつものサイズに広がるのかなと思い、頻繁に画面の横を気にしていたけど、ずっとスタンダードサイズだった。美しく高い山々をより強調したかったのか、往年の名作のような雰囲気にしたかったのか、意図はよく分からない。

2023.6.14 原作読了
使っている漢字が見たこともないくらい難しいものがあったり、文章も原文は「ここまで見事なイタリア語を書ける作家はそれほど多くはない」と評されているらしいが、私にはすんなり入って来ず。心理描写を知りたくて読んでみたが、詳しく書かれることもなく、断然、映画の方が良かった。
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