このレビューはネタバレを含みます
短編ドラマだったら面白かった
マンホールの穴の中に落とされた被害者の男川村俊介は、実は「川村俊介」を殺して彼に成り代わった別人で、、、
というお馴染みの展開に、黒木華演じる女の復讐劇と犯人探しのサスペンス、脱出劇の要素を組み込んだ本作。
90分の脱出劇とのことでアクシデントによる命のやり取りとマンホールに主人公を突き落としたのは誰か?という犯人探しのパートによって、物語に緩急をつけようと試みは良かったし、
演者においても主人公川村のマンホールで受けた傷をホチキスで塞ぐシーンなんかはリアリティがあってよかった。
しかしこの映画、長いのである。
まずいろんなジャンルの要素を詰め込みすぎて、話がコロコロ変わって物語に没入できないのである。
犯人探しのパートが始まって永山 絢斗扮する主人公の会社の同期が特定され、リンチにあったかと思えば、気づいたら黒木華扮する犯人の過去話が始まり、一つのパート完結する前に足早に次のイベントに移ってしまう。
さらにキャラクターのあらすじと深掘りがないので、映画が安く見えてしまう。
主人公の自分の立場への恨みや劣等感はより顕著に表現されるべきだし、川村俊介を殺す犯行に至るまでのエピソードと被害者との因縁はもっと描かれるべきだった。
そして物語に出てきた川村の会社同期の面々は、序盤で一瞬でフェードアウトするのでステマにしか見えないのである。
何より、物語の最後で主人公自身が自分の過去を自白してしまうのが御法度だと思った。
主人公の正体がわかってゾクっとするあの瞬間は、それを解き明かす第三者がいてこそ、より際立つものだと思う。
もちろん90分でキャラを描くことはもちろん難しいと思うが
設定にも難があった。
普通マンホールに落ちたら死ぬし、
可能した傷口はホッチキスより、待っていたライターやネクタイで止めた方がよかっただろう。
主人公を眠らせた睡眠薬の効きは早すぎるし
70キロの男の体を女性が持ち上げるのには無理がある。
最後に主役の演技をぽっど出の黒木華が食ってしまっていた。
川村俊介の絶叫シーンやひ弱な好青年のイメージなど、良いと思われる演技があっただけに、たった10分そこらの出番で主人公を霞ませた黒木華はさすがだった。
とここまで酷い文章を書いたが
決してつまらない、ということはなく話の展開としては面白かった。
Twitteでマンホールの場所を探すというシーンは新しかったし、何より展開自体にはマンネリが少なかったように思える。
しかし映画でやるにはどうも緊張感と話の構成が合わないと思うので。
この尺を縮めて、ドラマとしてで地上波12時くらいに流せばより面白いと思った。
最後に主人公を殺そうとした少年の容姿は解釈一致だった。