水蛇

プアン/友だちと呼ばせての水蛇のレビュー・感想・評価

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)
1.4
鬱陶しい自己憐憫。

お金ならあるから働くなと夢を無視して社会から孤立させられたり、友達として接してたのに「好きだってわかってただろ」と豹変されて怯えたりって女性が何度も遭遇する恐怖だから、男性同士で感傷に浸れる図太さしか印象に残らなかった。口では「ごめん」って言うけどその心は反省じゃなくて陶酔じゃん。二人ともプリムの人生は頭にないよね。彼女の行動にも難点はあったからボスの最初の怒りはわかるけど、ボスもウードもお互いのことは善悪ひっくるめて向き合ってることを考えたら明らかに対等じゃない。しかもこの類のでしょっちゅう見る「俺のだ」とか「返すよ」ってやつ、まだやってるんだ。2021年だよ。「何が返すだ、モノじゃないんだぞ」って怒ったところまではよかったけど、結局かっこつけただけだったからよけいにマイナス。女性を共同で客体化することで成り立つ男同士の友情という、昔からよくある男2女1の構図。女(体)を媒体にしないと成立しないわりに女にはわからない硬派な世界だと思ってるところが滑稽なんだよね。「突然炎のごとく」あたりの古典も10代のころは好きだったけど、この構造に気づいたらバカバカしくなった。「ファースト・カウ」(2019)の直後に観るとよけいに「2021年制作!?」ってショックを受けてしまう…

男性達は監視し合うことなく女性をダシにすることなく、もっと自由になってただお互いのための友達でいることができると思う。だからわたしはこういう女性も男性もバカにするマチズモをずっと批判していくし、別の道があることを言いつづける。

あとは単純にお酒、ラジオ、音楽、ニューヨークとモチーフが多すぎるし、メインテーマに格差問題も中途半端に入れてきて散漫なぼやけた味だった。ここでのウォン・カーウァイはいったい…。
水蛇

水蛇