強い

プアン/友だちと呼ばせての強いのレビュー・感想・評価

プアン/友だちと呼ばせて(2021年製作の映画)
3.7
余命幾何もない男・ウードが過去の「借り」を返すためにNYからかつての親友でバーテンダーのボスを呼びつけて旅をするロードムービー、がA面。
録音していた深夜ラジオでは既に亡くなったウードの父がDJとして孤独なドライバーに寄り添い、二人はそれを聴きながら元恋人たちに会いに行く。

そしてカセットを裏返すと、主人公が交代。呼びつけられたボスの過去を辿るB面。謝罪と告白をするのは、これから亡くなる“かつての親友”ウード。

終始爽やかで美しく、構成も凄く気持ち良い。父のラジオとカセットテープと音楽、車も海も酒も、全てがエモーショナルでほろ苦い。
印象的なシーンの連続で、まさに良いカクテルを味わっているような気分。


ただし、こればっかりは私の性格の問題なのでしょうけれど「死にそうだから精算する」なんてド卑怯だ。「お前の人生を味わえた」なんてちょっと馬鹿にしすぎ。
たぶん元恋人が死ぬ間際に借りを返しに来たら、私は怒鳴り散らすだろう。てめえばっかり気持ち良くなりやがって、と憤慨するだろう。
最後に行った子持ちの元恋人の「私の気持ちはどうでもいいの?」やボスの「お前は病気を口実にしているだけで自己中心的だ」という言葉にずっとそうだそうだ!と思っていたのでした。

とはいえ、思い出は美化されていくもので、今まさに燃え付きようとする命と共に潮風に当たりながら懐かしい日々を巡った最期に残される「ごめん、ありがとう」は、一生心について回るだろうな。

感情移入は難しかったけれど、もしこれを本当に自分事として捉えるならば「いつか許して欲しい」という願いには、「もうとっくに許している」と思うのかもしれない。怒るなんてただの経験不足なのかもしれない。
甘くほろ苦いカクテルを味わって、悪酔いした気もするし、案外明日はスッキリしているような美酒なのかもしれない。


しかしこれも邦題ダサいなぁ。
なんで『ONE FOR THE ROAD』じゃダメだったの……?
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