DZ015

ボンボン BOMBONのDZ015のレビュー・感想・評価

ボンボン BOMBON(2004年製作の映画)
4.4
好きなんです、こういう「何も起こらない」映画。

2004年アルゼンチン作品。20年間勤めたガソリンスタンドをクビになり、娘夫婦の家で肩身の狭い居候生活を送るビジェガス。ある日車が故障して立ち往生している女性に出会い、修理してくれたお礼にと大きな白い犬を貰う。居候生活なのに貰っちゃうところがビジェガス。そう何事も嫌とはいえないお人好し。そして犬舎の名前である「レ・チェン」を犬の名前だと思いこむビジェガス。しかし実はこれが血統書付のとんでもない名犬で、事態は思わぬ方向に、、、。

「子供と動物には勝てない」なんて言葉があるように、物語のすべてを持っていってしまうのが常ですが、この映画の特筆すべき部分は主人公のビジェガスが終始犬に食われてない(噛まれはするけど)ところなんです。このビジェガス、本名はフアン・ビジェガス、、、そう実はただの一般人が本名で出演してるんですね。その朴訥とした雰囲気がこの映画にぴったりです(ビジェガスのみならず出演者のほとんどが素人だそうです)。そして彼の目、あれはまぎれもなく草食動物の目です。どんな逆境にもギラギラのポジティブさで立ち向かうのではなく、流れに身を任せることで乗り越えていくような、諦念と達観の間のような深みを持ったキラキラの瞳。あんな瞳の中年でいたい。ガソリンスタンドのくじ引きで当たった「メン・イン・ブラックみたいな」サングラスを嬉々としてかけながらボロ車を走らせるシーンなど何故か涙が出そうになった。

人と人との出会いも運命だけど、人と動物の出会いもまた運命。
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