なつこ

ヴィレッジのなつこのレビュー・感想・評価

ヴィレッジ(2023年製作の映画)
4.0
凄かった。
見えない檻のような同調圧力、希望なんて1ミリもないあの村に、心が踏みつけられたまま逃げられなかった。

小さなコミュニティに縛られるような閉塞感、あそこまでではなくても、覚えがある人はいると思う。
村でも町でも学校でも会社でも、コミュニティが自分の前向きな思考や立ち上がる気力を奪っていく。

借金も母親も置いて村を出てしまえばいいと思ってしまうけど、優にはそれができない…いや、そんな気力さえとっくに失っていたのかもしれない。

優を苦しめたのは、透のパワハラや母親の借金ももちろんだけど、村全体の偏見の目であり、自分を排除しようとする威圧感だ。

そういえば黒木華ちゃん繋がりで、描き方は違えど「イチケイのカラス」も同じように、村の中で静かに広がる同調圧力で皆が口を閉ざしているという作品だった。

脚本に全く無駄がなく、観ているだけなのに八方を塞がれた気持ちになる。
演者も皆全身から負のオーラを放っていて
飲み込まれた。

やっと光が差したと思っても、現実はそんなに甘いものではないと、突きつけてくる。

能の舞いや唄が世界観をがっつりと掴んでシンクロしていた。他に代わるものは考えられない。

楽しい話では無いけど、映画好きには観て欲しいと思わせる傑作。

ラストの横浜流星の表情が素晴らしかった。ヤクザと家族の磯村勇斗もそうだったけど、藤井監督は役者から絶妙な表情を引き出す魔法でも持っているのだろうか。

河村プロデューサー最後の作品。
最後まで攻めた素晴らしい作品でした。
なつこ

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