ニャーすけ

ダークグラスのニャーすけのネタバレレビュー・内容・結末

ダークグラス(2021年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

ダリオ・アルジェント10年ぶりの新作ということで、ジャッロ映画ファンの歓喜に水を差したいわけではないのだけれど、アルジェントのスラッシャー演出は正直もはや時代遅れになってしまっていることは否めない。特に、クライマックスで殺人鬼を撃退するきっかけが「ただ運良く檻が開いてくれた」というのはいくらなんでも厳しすぎる。障害者が善玉か悪玉かという違いこそあれ、『ドント・ブリーズ』が同じ盲目という設定を完璧にサスペンスやアクションに活かしていたのとは対照的。

ただ、男の女性嫌悪を起因とする事故が原因で、それぞれ視力と両親を失ってしまうのがコールガールと中国人少年というキャラクター造形は素晴らしく、この関係性の面白さが作品を牽引している。作風はまったく違うけど、ちょっと前に観たアリ・アッバシの『聖地には蜘蛛が巣を張る』を彷彿したり。
この女性差別と多様性への言及が、老監督が時代に阿っただけの上っ面のものではなく、誠実さを感じるストーリーテリングに結実しているのがとても良い。結末は幾らでも甘ったるく出来ただろうが、あくまでも悲しくビターな余韻が忘れ難い。エンディングだけで言えば、今年観た映画の中でも断トツで好きかもしれない。
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