とても変な映画。佳作かどうかも怪しいような気もするけど、妙な魅力がある憎めない作品。
導入は見事で街の住人がぼーっと日食を見るのが不穏。話自体はオーソドックスで娼婦殺人のサイコキラーという「切り裂きジャック」的な印象。アルジェント的なグロ描写は意外と序盤の刺殺シーンかもしれない。ちょっと大げさにやるのが良い(少しユーモラスな感じは大事)。
さて、この映画。いわゆる作劇上の定石をことごとく外していく。前半以降は長閑に進むし、過度に仲良くならない中華系の子ども、目が見えなくても前向きな娼婦、誠実な太客、頼りになりそうで無能な警察という感じで、他にも「怪しい」「フラグ」みたいな要素を外すのは新鮮だった。因果応報っぽい展開もあるが、モラルテイルではないし。
ただ、映画的に褒められるかというと、これまた微妙で、どうしても「緩い」印象を受ける(とはいえ嫌な気持ちはない)。意外とほのぼのムードなので、「ロードムービー」的というのは重要な要素であると思う。そう思ってみるとラスとの締め方なんかは素敵だ。大ベテランになってヘンテコな映画を撮ったアルジェントはやはり変な人だ。