くりふ

ファンタスティック・プラネットのくりふのレビュー・感想・評価

4.5
【ブックメタファを忘れた動く絵本】

しばらく前に、一日だけのルネ・ラルー映画祭というのがあり、フィルム上映は貴重だろう、と行って来ました。しかしどうにも違和感。大きなスクリーンに、なんだか合っていないような気がしたのです。

すこし迷った末、これを機にルネ・ラルー作品を一気見しようと、「ルネ・ラルー コンプリートDVD-BOX」を入手、まずノートPCで没入。そうしたら落ち着きました(笑)。

個人的感覚ですが、本作は絵本ですね。サイズはお手頃な方がよく、各カットは一枚絵として眺めた方が面白い。

実際、イントロこそモンタージュで緊迫感を出していますが、その後はカット繋ぎより、1カット内での変化を注視する作りになってます。時間と動きを与えられた絵画。だから逆に、受け身なのがもどかしい。

書籍化されていないステファン・ウルの原作を読みたいせいもあるのですが、昔流行った、CD-ROMブックのような体裁で、本作を改めて、みてみたい。好きだった「LULU」のような体験ができたらいいなあ、と妄想しております。

巨大異星人の惑星で、ペットや奴隷として生きる人間が反乱するお話ですが、わりとフラットな視点で描かれ、人類自慢にも自虐にも転んでいません。

植民地帝国とフランス革命を共に経験したお国ゆえの感覚かなあ、とかなり慌しく結論される、が意外な結末をみつつ、ざっくりと思いました。ここには五月革命のフラッシュバック、という意味もあるのでしょうか。

しかし、語り方としては少々、ぎこちないと思います。やはり絵の中に浸る、という楽しみの方が、本作では圧倒的に大きいですね。

異星人の日課である、物語の要となる幽体離脱や、幻想的原始というような、地球にはない人間のエロスな生態、子供の落書きが立体化したような怪物、声で砕けるクリスタル茸? などの、奇妙な世界の欠片がぎっしり詰め込まれ、自分が異界の旅行者に徹するだけでも充分、楽しめます。

ローラン・トポールとは早い時期に仲たがいし、彼は離れたそうですね。絵のタッチがけっこうバラバラなのはそのせいでしょうか。時々、人物がしりあがり寿になるので笑っちゃいました。あとは、諸星大二郎さんを強く想起させます。彼は本作の影響、受けたのでしょうか。

なんにせよ本作、独自性ということでは特出していますね。面白い/つまらない、を超えて、一度はみておく価値があると思います。

<2010.5.28記>
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