都部

ファンタスティック・プラネットの都部のレビュー・感想・評価

3.5
シュールレアリスムとの遭遇を思わせる作画により形作られる72分間の明け透けな悪夢のような映像は、支配するものされるものの関係の前者に位置しがちな人間が後者として扱われる奇妙な世界観を淡々と語り続け、その中で遠慮に知性の重要性を説いていく物語は理知的である。

万人向けなら進撃の巨人にも影響を及ぼしたとされる本作だが、そうした後年の芸術作品に影響を与えるに足るような、当時の価値基準からすると独創極まる画が連続し見ていて飽きない。我々の世界に存在する生命体と若干は似ていながらも、その生態が理解の外側にある摩訶不思議な生物や植物のカットインから得られるセンス・オブ・ワンダーは、異なる世界の探訪譚を脳髄に流し込まれるかのようで刺激的だ。

家畜同然に扱われる人間──に似たドラーグ族の害虫さながらの挙動も、営みから思考や哲学を奪った野性的なもので、この考えることを放棄したもの達のそれに不快感を覚えるような部分も見られた。
では知能ある存在として描かれるオム族が素敵かといえばそうでもなく、青という人肌にしては受け入れ難い配色と魚のような瞳は慄きを抱かざるを得ないし、このオム族の独自文化である"瞑想"の奇々怪々たるビジュアルは心的な歩み寄りを放棄させるものだ。

物語それ自体は寓話的──取り上げようと思えばどんな風刺も取り上げられる普遍的な内容という意味で──であるが、妙に頭に残る環境音や効果音が物語としての質感に現実と地続きの感覚を与えているし、この豊かな音響効果と無二の世界観が代替の利かない作品を形作っている。
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