映画大好きそーやさん

ファンタスティック・プラネットの映画大好きそーやさんのレビュー・感想・評価

4.2
ディストピア的世界観で語る、現実世界における革命の寓話。
本作は世界観の確立された作品として、非常によくできていたと思います。
アニメーションはやや紙芝居的ではありますが、ある種それが絵本的なタッチのデザインで構成された画面とマッチしていて、作品の寓話性を高めるのに寄与していました。
明らかに人間が重ねられた(作中でも「人間」と表される場面がある)オム族は、魚の鰭のような耳に、青い皮膚が特徴的なドラーグ族の下に位置する生物として虐げられています。
本レビューの冒頭で「ディストピア」という言葉を用いましたが、本作にはそういった未来的なガジェットや世界設定が随所に確認でき、SF好きのセンサーに反応するようなディストピア感が巧みに演出されていました。
ただディストピアだから私たちとは無関係の話かと言われれば、決してそういう訳ではなかったと思います。ディストピアは皮肉的な解釈とも捉えられて、強者が権力や武力、あるいは学力を行使して、弱者を甚振るという構図は、現実世界においても各地で起こってきているし、現在も、そしてきっと未来にも起こり続けることと言えるでしょう。
本作が興味深いポイントは、その構図をひっくり返そうとする弱者の物語ということにあると思います。
物語を怪しくも牽引するのはオム族のテールを拾った、ティバを始めとするドラーグ族の面々でしょうが、モノローグは一貫してテールが担当しています。
後半はティバの元から逃げ出したテールの動向が描写されていくため、上記の「弱者の物語」というのも納得して頂けるかと思います。
オム族は、身体からしてドラーグ族には勝てません。個と個では大きな戦力差がありますが、そこで武器になるのが学力の先にある知識と、しぶとく生きて仲間を増やす生命力です。
弱者は弱者なりに戦う術を見つけ、最初こそ一枚岩でなかった状況から、手を取り合うことで「革命」を成立させる。この物語的カタルシスに留まらない感動は、「世界中のクリエイターに多大な影響を与えたSFアニメーションの金字塔」というキャッチコピーを体現する内容になっていました。
1点指摘したいのは、服を作る生物がいることについてです。それは、人間の生活という前提で成り立つ空想でしかなく、少々冷めてしまう部分ではありました。
総じて、ディストピア的世界観で語る、現実世界に生きる弱者たちに向けた寓話に、ただただ感動してしまう作品でした!