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ファスビンダーのケレルのフワッティーのレビュー・感想・評価

ファスビンダーのケレル(1982年製作の映画)
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「似ても似つかぬ分身(ここでは兄弟)」、「同性愛者のアイデンティティー」など、ファスビンダーが度々題材にしてきたものが盛り込まれる。

大規模なセット撮影で挑まれた本作。建造物・装飾の模様・便所の落書きなど、セットにも性衝動が表れる。しかしながら、暖色に加工された映像とは裏腹な静かな雰囲気、控えめな過激描写など、明らかに過去作とは異なる表現で完成されている。(『自由の代償』などを観れば明らかだろう)

ファスビンダーの遺作にして、その新境地が見えた映画。これから作風が変化するという転機となった本作の公開前に、ファスビンダーはこの世を去った。生き急ぐ天才の早過ぎる死。

新境地に至ったところで死を遂げるというのは、偉大な人物の宿命なのだろうか。ブレッソンの『ラルジャン』、太宰の『グッド・バイ』なぞと似たものを感じる。
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